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2008年3月

2008年3月23日 (日)

ザヤックルールとコンビネーション回数制限・後編

さて、今回の世界選手権で一部の選手を苦しめたコンビネーション回数制限に関する解説です。

実は昨年の世界選手権でも同じルールで痛いミスをした選手がいました。
そう、織田信成選手です。

しかし、織田選手と今年の3選手との違いは、織田選手はザヤックルールは絡んでおらず、今年の3選手はザヤックルールが絡んでいたことです。

そもそもコンビネーション回数制限のルールとはシンプルなルールです。

1) フリースケーティングでのコンビネーションジャンプ、ジャンプシークエンスは合わせて3度まで。4度目のコンビネーション、シークエンスは種類を問わずまるごと無効になる。

2) 3連続のコンビネーションジャンプは1度まで。2度目の3連続コンビネーションジャンプはまるごと無効になる。

2番目に違反してしまった選手は、多分いないのではないかと思います。非常にわかりやすいし混乱することもまずないからです。
1番目の方がやや厄介といえます。

まず先に、ザヤックルールと関係のない織田選手のジャンプ構成をあげてみましょう。

1 3A+3T+3Lo
2 2A
3 3S+2T
4 2A+3T
5 3Lz*+2T* (無効要素)

6 3F
7 3Lz
8 2A

織田選手は4度目のジャンプに単独のトリプルアクセルを予定していました。が、跳べなかったためとっさに2A+3Tのコンビネーションにしたのです。そして、その次のジャンプもコンビネーションにしてしまった。これがいけなかった。完璧な数え間違いです。
では、ルッツをコンビネーションにしなければよかったのでしょうか? 実はそうではありません。なぜならルッツを2度跳んでいるから、1度はコンビネーションにしなくてはいけなかったのです。つまりあくまで余分だったのは2A+3T。単独のダブルアクセルでここは我慢すべきだったのです。

一方で、今回の高橋選手の失敗は少々気の毒なものでした。ザヤックルールで余分なシークエンスが2つも入ってしまっていたのです。

1 4T
2 4T<+SEQ
3 3A
4 3A+SEQ
5 3F+3T
6 3S
7 3Lo
8 3Lz*+2T* (無効要素)

チャン選手、キャリエール選手が同様の失敗をしていたのがあって、最後にセカンドを跳ぶな跳ぶなと念じながら見ていたのですが、それはフジテレビの解説の本田さん、Jスポーツの解説の田村さんも同様だったようです。お二人が指摘しているので私が言うことは何もないのですが、言えることがあるとすれば、先のエントリーでも述べましたが、構成上リカバーの手だては何もなかったので、何もしないのが一番の対策だったということです。

一方で、実は織田選手の失敗では他の手だてがありました。
彼はトリプルアクセルを2度跳ぼうとして1度しか跳べませんでした。ここがポイントです。トリプルアクセルを跳んで転んだのではなく、ダブルアクセルをきれいに決めていました。つまり、ザヤックルールで認められている2度の同一ジャンプの枠を使い切っていない状態だったのです。
ですからダブルになったアクセルは単独のまま、ルッツのコンビネーションはそのままで、最後のダブルアクセルをトリプルループにするとか、それが難しければ3Lz+2Tを3Lz+3Tにしてしまうことも可能だったのです。
しかしこんなことはたらればに過ぎませんね。全ての可能性をその場で判断するのは、特に極限状態で滑っているスケーターには無理なことです。できるだけ失敗のフォローはシンプルに、最もありそうな3通りくらいの失敗だけを想定し、普段からそれだけをシミュレーションして、それ以外のことはしないようにする、これが確実だと思います。

どちらかの個人ブログで、オリンピックの荒川静香さんの偉かったことを「失敗を取り戻そうとして余計に難しいことをするより、練習通りの構成をクリーンにする方を選ぶことができた冷静さ」だったとおっしゃっていたのを見かけたのですが、まさしくその通りだと思います。

とっさの判断というのは、ときには成功することもありますが、あまりアテにしないほうがいいものであったりします。

ザヤックルールとコンビネーション回数制限・前編

世界選手権、全てのメダリストが決定しました。泣いた選手も、笑った選手も、全ての選手達に、御苦労様と言いたいです。1年間私も涙あり笑いありのシーズンを過ごさせてもらいました。
エキシビションに出る選手達は、是非是非最後にはっちゃけていただきたいですね!

レビューを何か書こうと思ったのですが、演技を見返しているといろんな思いが交錯してなかなか言葉にできません。

でも、以前から書こう書こうと思っていて機会を失っていたことをこの機に書いておきたいと思います。基本的なルールのお話。結構、この検索ワードでこちらにいらしている方もいるようなので。
やっぱり私は演技そのものに何かを言うよりルールや一般論から入って実例を挙げていく方が饒舌になるようです…

俗にザヤックルールと呼ばれているルールは、「フリースケーティングにおける同じ種類のジャンプの回数制限」に関する3つの基本的な約束事のこと。ファーストエイドの文章では2文くらいでまとめられていたと思いますが、実際的な違反や抵触ということに注目すると3つの約束と覚えておくとわかりやすいのです。
で、その3つの約束事とは以下のもの。

1) 3回転以上の同じジャンプ(※種類と回転数がまったく同じジャンプ)3回以上跳んではいけない。3度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

2) 3回転以上のジャンプで3種類以上同じジャンプを複数回跳んではいけない。3種類目の2度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

3) 3回転以上の同じジャンプを2度跳ぶときは、少なくとも1度はコンビネーションジャンプかジャンプシークエンスにする。どちらも単独で実施された場合、後に実施したものをセカンドジャンプ不明のジャンプシークエンスとして扱い、コンビネーション、シークエンスとして数えることにする。

1つめの約束事に違反してしまった選手は、GPシリーズにいました。スケートアメリカのルータイ選手です。
ジャンプ構成をあげてみましょう。

1 3A
2 3T+3T
3 3A+2T
4 3Lz*+3T* (無効要素)
5 3Lo
6 2F
7 3S
8 2A

ルータイ選手は4回転のコンビネーションを跳ぼうとして、回転が抜けて3回転になってしまったようです。そのフォローを適切にすることができず、次の3-3の全てが無効要素になってしまいました。本当にこのミスは痛い。4回転が跳べなかったから、せめて3回転をたくさん跳んで…と考えると、かえってドツボにはまってしまうのです。
4回転がらみのこういったミスはありがちなもので、GPファイナルの高橋選手はこの違反をおそれてセカンドトリプルを跳べなくなってしまったということがありました。実際には次に単独の4回転を跳んだのでセカンドトリプルを跳んでも大丈夫だったし、跳んでおけば優勝できたのですが…こういう微妙なところで勝負が決まってしまうリスクが、4回転にはあります。

2つめの約束事に違反した選手は世界選手権の男子にいました。アントン・コヴァレフスキー選手です。
こちらもジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 3F+3T+2Lo
2 2A
3 3Lz+3T
4 3Lo
5 3Lz
6 3F* (無効要素)
7 3S
8 2A

6番目のフリップは3種類目の複数回ジャンプです。最初を3-3-2ではなく3-2-2にすればよかったのですが…できるだけたくさんジャンプを跳びたいと思うからしてしまう新採点システムの罠ですね。セカンドトリプルに自信があるけれど、単独の高難度ジャンプの跳べない選手がこのような失敗を犯してしまいがちです。

最初の違反も次の違反も、コンビネーションのセカンドジャンプが絡んでいますが、実際にこういうパターンが非常に多く、ファーストジャンプだけでのザヤックルール関係のミスはとても稀です。
おまけに3つめの約束事が非常にコンビネーションに関わりが深いため、よくコンビネーションの回数制限違反とザヤックルールは混同されがちになります。けれど理屈の上ではコンビネーション回数制限とザヤックルールは異なるものです。3つめは「抵触」するだけで「違反」して何かが無効になることはない約束事、と私は覚えています。

ここでは区別をつけるために、3つめの約束事だけに抵触し、コンビネーションの回数制限には違反しなかった例として、日米対抗の高橋選手のジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 4T
2 4T+SEQ
3 3A
4 3A+SEQ
5 3F
6 3S
7 3Lz
8 2A

このとき高橋選手はまったくコンビネーションジャンプを跳べませんでしたが、ルール上ジャンプシークエンスを2回行っているという扱いになります。ジャンプシークエンスは基礎点が0.8倍になってしまうので、コンビネーションにできないというのはかなり大きな失敗になってしまいます。
ランビエール選手などはジャンプが乱れても意地でセカンドジャンプをつけてきていますが、そういうことができるならしておくことは、実は基礎点の上で大切なことです。
私の記憶に残っている素晴らしいリカバリーは、06年エリックボンパール杯の安藤選手の演技です。

1 3Lz
2 3S
3 3F
4 3Lz+2Lo
5 3T+2Lo+2Lo
6 3F+2Lo
7 2A

最初に跳ぶのが3Lz+3Loのコンビネーションのはずでしたが、ファーストジャンプで転倒してしまいました。けれども安藤選手は、後半の2度目のルッツをコンビネーションにしてきました。これは2度目のルッツだからこそ意味のあるリカバーであり、他のジャンプにつけたのでは無意味どころか逆効果でした。2度目のルッツはセカンドをつけようがつけまいが、コンビネーション、シークエンス扱いになってしまい、コンビネーション3つの枠を1つ埋めてしまうからです。
2度の同じジャンプの片方を含むコンビネーションでの失敗は、成功しようが失敗しようが絶対にコンビネーション枠を1つ使ってしまうこと、1つの基礎点が0.8倍になってしまうことの両面で痛いのです。ただ単に、セカンドジャンプの得点を失うというだけの話ではない。ザヤックルールの3つの約束事の中で、実は最もわかりにくく、それだけに損をしやすいのがこのルールなのです。
もし安藤選手がルッツを単独のままにしていれば、基礎点は5.28点でした。これをコンビネーションにしたために、8.25点の基礎点を得られ、基礎点を3点近くリカバーできたのです。急なことだったためか着氷が乱れてしまいましたが、GOEで取り返そうとするよりは効果的なリカバーだったはずです。
実際、こういったリカバーはコンビネーションの大技を持っている選手はよく練習してあって、しかも極力シンプルなリカバリーで済むように構成してあるものです。それにしても安藤選手は見事でした。

しかし、高橋選手の構成は、リカバーのしようがない構成でした。2回跳ぶ4回転とトリプルアクセル、どちらも2回目のジャンプの方がコンビネーションになっているからです。ファーストジャンプで転べば必ずセカンド不明のシークエンスになって終わりです。後半にトリプルアクセルのコンビネーションをもってくる意図は理解できるのですが、4回転のコンビネーションを2回目にしていたのは戦略的にはリスキーなものだったといえます。多分、心理的に跳びやすい順に並べていたのでしょうが…。

まずこのエントリーではこれまで。
昨日の男子フリーで3人も失敗したコンビネーション回数制限違反については、後半エントリーに詳しく解説していきたいと思います。

2008年3月22日 (土)

GPシリーズ男子のPCS

世界選手権、残すは男子フリーのみになってしまいました。
ろくにレビューとかできない状態で申し訳ありません。プロトコルもまだちゃんと見ていない状況。でも毎日テレビで演技を見ています。

で、今回はタイムリーなのか思いっきり時季はずれなのか微妙なGPシリーズ男子シングルのPCSについて。
女子と比較して思うのはSSと他観点との差がプラスマイナスで極端だということ。特にマイナスになっている(他観点の評価が高い)選手が多いのです。
このような傾向が出てくる理由は、男子は体力があり要素以外に割ける力、あるいはスケートが拙くても身体能力で補える部分が多いということや、身体能力のピークが技術や精神面での成熟に合わせてやってくることから個性や芸術性についてよく考えてそれを実施できる選手が多いということではないかと思っています。
それゆえ私は男子の方が競技としては好きだったりもするのですが、一方で4回転などプログラムに負担をかける大技が回避される傾向にあるともいわれてしまったりします。ジャッジとしてはそのバランスをとるためか、プログラムに負担をかける大技が入るとそれだけでSSが高く出たりします。それが逆に他観点との差を広げる場合を生んでいそうな気がします。
「いかに難度の高い技術要素を自然にプログラムに組み込むか」と「全体の完成度や音楽の流れをいかに調和させていくか」のどちらに高いPCSを与えていくべきなのか、このあたりは議論も分かれてきますね。

では、具体的な数字をあげていってみたいと思います。

◆男子SP◆
大会ごとのPCS平均(ファイナル以外)
1 NHK杯 (31.51)
2 ロシア杯 (31.18)
3 スケートアメリカ (30.50)
4 中国杯 (30.20)
5 エリックボンパール杯 (29.86)
6 スケートカナダ (29.00)
ちなみにファイナルは36.21
SSと他観点との得点の差(ファイナル以外。小さいほど他観点の得点が高い)
1 NHK杯 (0.45)
2 スケートアメリカ (0.56)
3 ロシア杯 (0.57)
4 中国杯 (0.72)
5 エリックボンパール杯 (0.94)
6 スケートカナダ (1.31)
ちなみにファイナルは0.67

その上で
・SS分布
7点台 16
6点台 33
5点台 28
・TR分布
7点台 11
6点台 22
5点台 36
4点台 8
・PE分布
7点台 14
6点台 30
5点台 29
4点台 4
・CH分布
8点台 1
7点台 16
6点台 28
5点台 29
4点台 3
・IN分布
8点台 1
7点台 16
6点台 29
5点台 26
4点台 5
最高点は全てGPファイナルの高橋大輔選手。順に 7.95 7.60 7.90 8.15 8.10

・SS-TR 最低差 スティーヴン・キャリエール(NHK杯) 0.0
0.75~ 0.99 2
0.50~ 0.74 23
0.25~ 0.49 40
0.00~ 0.24 12
・SS-PE 最低差 高橋大輔(スケートアメリカ) -0.4
0.50~ 0.74 3
0.25~ 0.49 24
0.00~ 0.24 33
-0.25~ 0.00 16
-0.50~-0.26 1
・SS-CH 最低差 アルバン・プレオベール(エリックボンパール杯) -0.45
0.50~ 0.74 1
0.25~ 0.49 25
0.00~ 0.24 32
-0.25~ 0.00 16
-0.50~-0.26 3
・SS-IN 最低差 アルバン・プレオベール(エリックボンパール杯) -0.70
0.50~ 0.74 6
0.25~ 0.49 23
0.00~ 0.24 30
-0.25~ 0.01 25
-0.50~-0.26 3

・トータル 最低差 アルバン・プレオベール(エリックボンパール杯) -1.25
2.00~ 2.99 4
1.00~ 1.99 26
0.00~ 0.99 30
-1.00~-0.01 12
-2.00~-1.01 1

◆男子FS◆
大会ごとのPCS平均(ファイナル以外)
1 ロシア杯 (63.07)
2 NHK杯 (62.55)
3 スケートアメリカ (61.44)
4 中国杯 (60.78)
5 エリックボンパール杯 (60.52)
6 スケートカナダ (59.33)
ちなみにファイナルは72.43
SSと他観点との得点の差(ファイナル以外。小さいほど他観点の得点が高い)
1 NHK杯 (0.77)
2 ロシア杯 (0.78)
3 中国杯 (0.84)
4 エリックボンパール杯 (0.85)
5 スケートカナダ (1.38)
6 スケートアメリカ (1.47)
ちなみにファイナルは0.74

その上で
・SS分布 最高点 ステファン・ランビエール、高橋大輔(GPファイナル) 7.95
7点台 19
6点台 33
5点台 24
4点台 1
・TR分布 最高点 ステファン・ランビエール(GPファイナル) 7.60
7点台 13
6点台 23
5点台 32
4点台 9
・PE分布 最高点 ステファン・ランビエール(ロシア杯) 7.90
7点台 18
6点台 28
5点台 26
4点台 5
・CH分布 最高点 ステファン・ランビエール(GPファイナル) 7.95
7点台 19
6点台 29
5点台 24
4点台 5
・IN分布 最高点 ステファン・ランビエール(GPファイナル) 8.25
8点台 2
7点台 18
6点台 23
5点台 27
4点台 7

SS-TR 最低差 ショーン・ソーヤー(NHK杯) -0.05
1.00~ 1.24 3
0.75~ 0.99 7
0.50~ 0.74 22
0.25~ 0.49 35
0.00~ 0.24 9
-0.25~-0.01 1
SS-PE 最低差 クリストファー・ベルントソン(ロシア杯) -0.35
0.75~ 0.99 2
0.50~ 0.74 7
0.25~ 0.49 23
0.00~ 0.24 30
-0.25~-0.01 14
-0.50~-0.26 1
SS-CH 最低差 アルバン・プレオベール(スケートアメリカ) -0.45
0.75~ 0.99 1
0.50~ 0.74 7
0.25~ 0.49 25
0.00~ 0.24 31
-0.25~-0.01 11
-0.50~-0.26 2
SS-IN 最低差 エヴァン・ライサチェク(スケートアメリカ) -0.40
1.00~ 1.24 1
0.75~ 0.99 5
0.50~ 0.74 9
0.25~ 0.49 17
0.00~ 0.24 24
-0.25~ 0.01 15
-0.50~-0.26 6

トータル 最低差 ジェフリー・バトル(ロシア杯)、スティーヴン・キャリエール(NHK杯) -0.70
3.00~ 3.99 4
2.00~ 2.99 7
1.00~ 1.99 26
0.00~ 0.99 28
-1.00~-0.01 12

いかがでしょう。ショートでは高橋選手が、フリーではランビエール選手が高い評価を受けていることが一目でわかります。
それゆえこれらのプログラムを「マスターピース」と呼ぶ人がいますが、一方でマスターピースというのはもっと正統派な演技を指すものではないかと思う人も、特に古くからのフィギュアファンには少なくないようです。バトル選手やウィアー選手といった芸術性が高いといわれる選手のプログラムと少し違うのは、「これぞフィギュアスケート」というラインをあえて外し、スケートで表現するのが難しい動きを取り入れている点です。とりわけ鋭いリズムを巧みに表現するエッジワークと大胆な上体の動きは見る人に新鮮な驚きを与えます。逆に「これはフィギュアスケートではない」といわれる可能性もあるわけですが、しかし、スケート技術がなければ絶対にできないプログラムをしていることは誰もが認めざるを得ません。
正統な美しいスケートと、新鮮でエキサイティングなスケート、どちらがより素晴らしいのか、この点は私は、答えは出ないと思っています。ただ思うのは、いろいろな志向があるから、フィギュアスケートは面白いのだということです。ただ一点私がルールに注文をつけたいことがあるとすれば、できるだけ客観的でありつつも、演技の画一化をうながすようなルールであってほしくない、ということです。

他観点の評価では、さまざまなレベルで高評価が出ていますが、キャリエール選手の評価が高いことは注目に値します。
彼は決して演技派ではないし、実施している要素もあまり大技はないのですが、とにかく巧さがあります。突出した見どころがないからなんとなしに流れていきがちですが、さりげなく難しいつなぎを入れていたり、そつなく見苦しいところのない演技をまとめてくる力があります。NHK杯で見たときに感じたのは「下位選手とはやはり違う。演技が作品になっている」ということでした。興奮は与えなくても決して退屈することのない、安心してみられる心地よい演技でした。

世界選手権のフリー、本当に楽しみですね。四大陸の頃までは高橋選手が飛び抜けている感じでしたが、こうして出揃ってみると本当に誰が勝ってもおかしくない状況にあると思います。
一人でも多くの選手が、納得のいく演技をすることを今から願っています。

2008年3月20日 (木)

GPシリーズ女子のPCS

世界選手権、試合が進んでいますね。ペアの結果が出ました。
ペアはシングルと同じ感覚でジャンプの着氷だけ見ていると、ピンとこない得点になってしまうことがあります。しかし、リフトやデススパイラルなどシングルにはない要素、また同調性や同調した上での自然なスケーティング、男女の距離感など、ペアならではの部分がとても大切だったりします。
私はペアはシングルよりさらにまだまだ勉強が足りないのですが、フリーの放送された分はそのうち簡単にレビューしてみたいと思います。ショートは…予約録画している間にリフォームの電気屋さんがアンテナ線を抜いてしまったそうで全然録画できていませんでした…。

さて、GPシリーズの集計も大詰め、今回はPCSの点の出方の傾向を見てみたいと思います。GOEもそうなのですが、PCSは結構大会によって点の出方が違ったりします。出場者の顔ぶれや競技自体の出来映えも大会によって違いますから、違うから即偏っているとは言えないのですが、やはり実際甘さ辛さはありますから、その傾向も合わせて表記しておきます。

◆女子SP◆
大会ごとのPCS平均(ファイナル以外)
1 NHK杯 (24.29)
2 スケートカナダ (23.02)
3 中国杯 (22.99)
4 スケートアメリカ (22.97)
5 エリックボンパール杯 (22.40)
6 ロシア杯 (22.01)
ちなみにファイナルは27.77
SSと他観点との得点の差(ファイナル以外。小さいほど他観点の得点が高い)
1 NHK杯 (0.59)
2 スケートアメリカ (0.83)
3 中国杯 (0.87)
4 エリックボンパール杯 (0.88)
5 ロシア杯 (0.95)
6 スケートカナダ (1.08)
ちなみにファイナルは1.08

その上で
・SS分布 最高点 金妍兒(GPファイナル) 7.65
7点台 15
6点台 22
5点台 31
4点台 7
・TR分布 最高点 安藤美姫(NHK杯) 7.30
7点台 3
6点台 22
5点台 21
4点台 29
・PE分布 最高点 安藤美姫(NHK杯)、金妍兒(GPファイナル) 7.50
7点台 9
6点台 23
5点台 29
4点台 14
・CH分布 最高点 浅田真央(エリックボンパール杯) 7.45
7点台 12
6点台 20
5点台 29
4点台 14
・IN分布 最高点 金妍兒(GPファイナル) 7.50
7点台 12
6点台 22
5点台 27
4点台 14

・SS-TR 最低差 安藤美姫(NHK杯) 0.15
0.75~ 0.99 3
0.50~ 0.74 32
0.25~ 0.49 36
0.00~ 0.24 4
・SS-PE 最低差 エレナ・グレボワ(スケートカナダ) -0.35
0.50~ 0.74 2
0.25~ 0.49 25
0.00~ 0.24 36
-0.25~-0.01 11
-0.50~-0.26 1
・SS-CH 最低差 エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(スケートアメリカ) -0.20
0.25~ 0.49 20
0.00~ 0.24 48
-0.25~-0.01 7
・SS-IN 最低差 エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(スケートアメリカ) -0.40
0.50~ 0.74 1
0.25~ 0.49 19
0.00~ 0.24 43
-0.25~-0.01 10
-0.50~-0.26 2

・トータル 最低差 エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(NHK杯) -0.15
2.00~ 2.99 1
1.00~ 1.99 30
0.00~ 0.99 40
-1.00~-0.01 4

◆女子FS◆
大会ごとのPCS平均(ファイナル以外)
1 NHK杯 (46.98)
2 ロシア杯 (46.33)
3 スケートカナダ (46.27)
4 エリックボンパール杯 (46.02)
5 スケートアメリカ (45.49)
6 中国杯 (43.97)
ちなみにファイナルは56.99
SSと他観点との得点の差(ファイナル以外。小さいほど他観点の得点が高い)
1 スケートアメリカ (0.89)
2 ロシア杯 (0.96)
3 スケートカナダ (1.06)
4 NHK杯 (1.07)
5 中国杯 (1.10)
6 エリックボンパール杯 (1.22)
ちなみにファイナルは0.88

その上で
・SS分布 最高点 浅田真央(エリックボンパール杯) 7.85
7点台 15
6点台 23
5点台 28
4点台 9
・TR分布 最高点 浅田真央(エリックボンパール杯) 7.40
7点台 5
6点台 22
5点台 29
4点台 19
3点台 1
・PE分布 最高点 金妍兒(GPファイナル) 7.85
7点台 11
6点台 20
5点台 27
4点台 17
・CH分布 最高点 浅田真央(エリックボンパール杯) 7.65
7点台 11
6点台 20
5点台 31
4点台 13
・IN分布 最高点 金妍兒(ロシア杯、GPファイナル) 7.65
7点台 11
6点台 20
5点台 28
4点台 16

SS-TR 最低差 ラウラ・レピスト(スケートカナダ)、キーラ・コルピ(ロシア杯) 0.20
0.75~ 0.99 1
0.50~ 0.74 34
0.25~ 0.49 28
0.00~ 0.24 2
SS-PE 最低差 金妍兒(GPファイナル) -0.15
0.50~ 0.74 5
0.25~ 0.49 31
0.00~ 0.24 36
-0.25~-0.01 3
SS-CH 最低差 キャロライン・ジャン(スケートアメリカ) -0.15
0.25~ 0.49 22
0.00~ 0.24 49
-0.25~-0.01 4
SS-IN 最低差 ジョアニー・ロシェット(スケートカナダ) -0.20
0.50~ 0.74 2
0.25~ 0.49 27
0.00~ 0.24 41
-0.25~-0.01 5

トータル 最低差 キーラ・コルピ(ロシア杯) 0.20
2.00~ 2.99 1
1.00~ 1.99 42
0.00~ 0.99 32

3/21追記
時間がなくて昨日はデータだけ丸投げみたいな感じで解析も何もしませんでしたが…今日も十分な時間がありません。
PCS全体の得点で言えることは、プログラムがただの要素の羅列になっておらず全体を通して質が高く中身が濃いプログラムになっているかどうかということです。とりわけストローク自体の美しさやスピード感をはかるSS(スケーティングスキル)は全ての構成点の基準になっています。
一方でSSと他観点の差は、スケート技術に関係なく、小さいほどスケーターの能力を最大に魅せるよう工夫された、芸術性やエンターテイメント性の高い演技であるということができます。
他の観点の得点においてSSが基準になっているのは、やはりフィギュアスケートは第一にスケートの美しさを表現してなんぼであるためです。スケート技術以外の部分を使っていくら表現しても、それはスケートとしては評価されないものなのです。
けれどもやはりスケート技術以外何も要らないというわけではありません。音楽に合わせて、美しいと思わせるように滑るには、また観客を飽きさせず数分間魅せるには、ただ滑るだけではいけないのです。その工夫の積み上げが他観点とSSの得点差に反映されます。全体で見るとこれによって、ショート、フリー合わせて最大およそ5点くらいの差がつくとみられます。

2008年3月16日 (日)

男子フリーのスピン構成

世界選手権もはじまるというときにようやくGPシリーズの集計、スピンの最終回です。
実は家半分をリフォームすることになり、週末がかりで大掃除に追われておりました。ネットにはつなげていますがかなり不自由の多い状態です。更新頻度はますます落ちてしまうかもしれませんが、世界選手権もありますし、ネット時間はしっかり確保していきたいと思います。

さて今回は男子フリーのスピン構成。レイバックスピンを実施する女子と比べるとバリエーションはやや少ないですが、足換えスピンを多用しているのが目立ちます。

男子も足換えコンビネーションスピンをほとんどの選手が実施しています。1つだけ実施していない例がありますが、とりあえず今回も足換えコンビネーションをコンビネーションを満たすスピンと考えてそれ以外のスピンの分類を考えてみました。

<コンビネーションを3つ、単一姿勢を1つの構成>

★フライングスピンを満たすものがFCCoSp 2
・CCoSp,FCCoSp,FSSp,CoSp 2

★フライングスピンを満たすものがFCoSp 4
・CCoSp,FCoSp,USp,CoSp 2
・CCoSp,FCoSp,FSSp,CoSp 2

合計 6

<コンビネーションを2つ、単一姿勢を2つの構成>
※男子はフライングシットスピンが非常に多いので、2つ以上のフライングスピンがある場合ここではフライングスピンにはフライングシットを優先的に適用し、そののち単一姿勢のスピンを決定した。
1つだけ足換えコンビネーションスピンを実施していないプログラムに関しては、フライング足換えコンビネーションスピンをコンビネーションに適用した。

★フライングスピンを満たすものがFSSp 52
☆うち単一姿勢を満たすものがCSSp 34
・CCoSp,FSSp,CSSp,CoSp 28
・CCoSp,FSSp,CSSp,FCoSp 1
・CCoSp,FSSp,CSSp,FCCoSp 5
☆うち単一姿勢を満たすものがCUSp 5
・CCoSp,FSSp,CUSp,CoSp 3
・CCoSp,FSSp,CUSp,FCCoSp 2
☆うち単一姿勢を満たすものがFCSSp 5
・CCoSp,FSSp,FCSSp,CoSp 3
・CCoSp,FSSp,FCSSp,FCCoSp 2
☆うち単一姿勢を満たすものがFCUSp 3
・CCoSp,FSSp,FCUSp,CoSp 1
・CCoSp,FSSp,FCUSp,FCCoSp 2
☆うち単一姿勢を満たすものがSSp 1
・CCoSp,FSSp,SSp,CoSp 1
☆うち単一姿勢を満たすものがUSp 3
・CCoSp,FSSp,USp,CoSp 3
☆うち単一姿勢を満たすものがFCSp 1
・CCoSp,FSp,FCSp,CoSp 1

★フライングスピンを満たすものがFCSp 1
・CCoSp,FCSp,CSSp,CoSp 1

★フライングスピンを満たすものがFUSp 2
・CCoSp,FUSp,CUSp,CoSp 2

★フライングスピンを満たすものがFCSSp 2
・CCoSp,FCSSp,CSSp,FCCoSp 2

◆コンビネーションを満たすものがFCCoSp 1
・FCCoSp,FSSp,CSSp,CoSp 1

合計 58

<コンビネーションを1つ、単一姿勢を3つの構成>
※フライングスピンが自動的に決まる構成のみなので、その区別ののちに単一姿勢スピンをシンプルなものから適用した。

★フライングスピンを満たすものがFSSp 9
☆うち単一姿勢を満たすものがSSp 5
・CCoSp,FSSp,SSp,CUSp 4
・CCoSp,FSSp,SSp,CCSp 1
☆うち単一姿勢を満たすものがUSp 1
・CCoSp,FSSp,USp,CSSp 1
・CCoSp,FSSp,LSp,FCSSp 2
☆うち単一姿勢を満たすものがCSSpかCUSp 3
・CCoSp,FSSp,CSSp,CUSp 3

★フライングスピンを満たすものがFCSp 2
・CCoSp,FCSp,CSSp,CUSp 2

合計 11

<4つのスピンが認定されなかったもの> 2

いかがでしょう。男子選手は圧倒的にシットスピンが多いですね。もう少しいろいろなポジションの単一姿勢スピンがあれば、もっとスピンの楽しさが際立ってきそうに思うのですが、男子はどちらかというとジャンプが見せ場になりますし、まずはしっかり点を取ろうと思えば、こういう構成にならざるを得ないのかもしれません。
また、男子は柔軟性のある多様なポジションを持っていない代わりに両足でスピンを行ったりして、基礎的な筋力の強さやエッジコントロールを生かしたスピンを行っています。フライングスピンも高さがあって見応えがあります。

さて、ここまでGPシリーズの要素を振り返ってきましたが、次はPCSについてのデータをちょっと分析してみたいと思います。得点のランキングは資料室さんで見られるはずなので、5項目のバランスに関する分析をしてみたいのですが、まだどんな風な切り口にするか、具体的には浮かんでおりません…
でも世界選手権が終わる前にはまとめてしまいたいと思います。

2008年3月12日 (水)

女子フリーのスピン構成

GPシリーズのスピン集計、今回は4つのスピンの「構成」分類です。

男女とも、そんなに多様なパターンはないのではないかと高をくくっていたのですが、そんなことはなく、実に多様なパターンがありました。
最初は男女まとめてと言っていましたけれど、やっぱり男女別にまとめてみたいと思います。

スピンを構成する上での観点は4つあるように思います。
・できるだけ基礎点が高くなるように構成
・できるだけ得意な見栄えのいいスピンを中心に構成
・できるだけプログラムが単調にならないように構成
・できるだけ全体の演技時間を圧迫しないよう短時間で構成
どの優先度を高くするかは選手によりけりです。女子は4番目の項目もバカに出来ません。

△ここでフリーにおけるスピンのルールのおさらい▽
4つまで行うスピンのうち、
・少なくとも一つは単一姿勢(足換え、フライングの有無を問わない)、
・少なくとも一つはフライングスピン(単一姿勢、コンビネーション、足換えの有無を問わない)、
・少なくとも一つはコンビネーション(足換え、フライングの有無を問わない)
を行わなくてはならない。残り一つは自由。
ただし4つのスピンは全て異なる略記号のスピンになるようにする。

GPシリーズの女子では、全選手が足換えコンビネーションスピンを実施しています。これはSPの必須要素にもなっていて、かつ基礎点も最も高いため、一番実施しやすいためと考えられます。ここではまず、コンビネーションスピンの条件を満たすものはすべてCCoSpであるという前提で構成を考えていってみたいと思います。
スピンの順番は「コンビネーションスピン、フライングスピン、単一姿勢のスピン、もう一つのスピン」の順に並べています。

<コンビネーションを3つ、単一姿勢を1つの構成>
※単一姿勢を満たすものが1つしかないので自然に決定する。フライングスピンはFCCoSpかFCoSpになる。
♪レベルもとりやすく基礎点は高くできますし、中間姿勢が3度認められることも有利な点ですが、ややスピンに時間をとられること、せわしなかったり単調な印象になってしまうのが難点、と思われます。

★フライングスピンを満たすものがFCCoSp 1
・CCoSp,FCCoSp,FSSp,CoSp 1

★フライングスピンを満たすものがFCoSp 3
・CCoSp,FCoSp,LSp,CoSp 1
・CCoSp,FCoSp,FCSp,CoSp 1
・CCoSp,FCoSp,FSSp,CoSp 1

合計 4

<コンビネーションを2つ、単一姿勢を2つの構成>
※フライングスピンは単一姿勢、コンビネーションのいずれもありうる。フライングスピンが単一姿勢1つであれば話は簡単なのだが、コンビネーション、単一姿勢の両方にあったり、単一姿勢の2つともがフライングスピンだったりすると適用の判断に悩む。
ここでは可能な限り略記号の少ないシンプルなスピンから単一姿勢を適用し、そののちにフライングスピンを、これも単一姿勢から優先的に適用することとした。
♪異なる姿勢の単一姿勢スピンを2つ入れればプログラムの中で変化をつけられますし、単調にはなりますが得意な姿勢を2つ入れて要素点を稼ぐこともできます。最も一般的な構成です。

★単一姿勢を満たすものがLSp 30
☆うちフライングスピンを満たすものがFSSp 19
・CCoSp,FSSp,LSp,CoSp 17
・CCoSp,FSSp,LSp,FCoSp 2
☆うちフライングスピンを満たすものがFCSp 10
・CCoSp,FCSp,LSp,CoSp 9
・CCoSp,FCSp,LSp,FCCoSp 1
☆うちフライングスピンを満たすものがFCoSp 1
・CCoSp,FCoSp,LSp,CUSp 1

★単一姿勢を満たすものがSSp 3
・CCoSp,FSSp,SSp,CoSp 1
・CCoSp,FSSp,SSp,FCoSp 2

★単一姿勢を満たすものがCSp 3
・CCoSp,FSSp,CSp,CoSp 2
・CCoSp,FSSp,CSp,FCoSp 1

★単一姿勢を満たすものがCSSp 9
・CCoSp,FSSp,CSSp,CoSp 5
・CCoSp,FSSp,CSSp,FCCoSp 4

★単一姿勢を満たすものがCUSp 10
☆うちフライングスピンを満たすものがFSSp 7
・CCoSp,FSSp,CUSp,CoSp 3
・CCoSp,FSSp,CUSp,FCCoSp 4
☆うちフライングスピンを満たすものがFCSp 3
・CCoSp,FCSp,CUSp,CoSp 3

★単一姿勢を満たすものがFSSpかFCSp 6
・CCoSp,FCSp,FSSp,CoSP 6

合計 61

<コンビネーションを1つ、単一姿勢を3つの構成>
※この構成はすべてレイバックスピンを含んでいる。そこでレイバックスピンを単一姿勢のスピンと考えて分類してみた。
♪全てを異なる姿勢で構成すればくっきりと変化のある構成になるし、そうではなくてもコンビネーションスピンの苦手な選手には有用と思われますが、高いレベルを確実にとらなければ、基礎点の上では少々不利なのではないかと思います。

☆フライングスピンを満たすものがFSSp 8
・CCoSp,FSSp,LSp,USp 2
・CCoSp,FSSp,LSp,CUSp 3
・CCoSp,FSSp,LSp,FCSSp 2
・CCoSp,FSSp,LSp,FCUSp 1

☆フライングスピンを満たすものがFCSp 2
・CCoSp,FCSp,LSp,CSSp 2

合計 10

いかがでしょう。異なる略記号のスピンの組み合わせって、いくらでもあるものですねー。
安藤選手がレイバックスピンでレベルをとるのが難しく、NHK杯で構成を変えてきたことは知られていますが、真央選手もファイナルでは構成を変えてコンビネーションを3つの構成にしてきました。

ここではコンビネーションと単一姿勢との比率を重視しましたが、足換えスピンの比率も注目に値します。得意なスピンの傾向は、基本姿勢の違いだけでなく、パリエーションの多様さか、異なる足、エッジでのスピンか、どちらの方がより得意かということも特徴になります。「この選手はポジションは地味なのにスピンで高得点がとれている」という場合には、後者タイプだったりするわけです。

みなさんのお気に入りの選手がどういうタイプか、考えてみるのも面白いと思います。

2008年3月 9日 (日)

男子フリーのスピン

GPシリーズのスピン集計、今回は男子FS。

女子と比べて男子に見られる特徴はレイバックスピンを行わないこと。その代わりに足換えのスピンが多くなっています。
これは単に難しいレイバックの代わりに、というだけの理由ではなさそうです。フライングスピンの数はむしろ女子よりやや少ないくらい。その分やはり足換えスピンが多いのです。

これは推論ですが、男子は女子に比べてジャンプが1回だけ多くなっているのですが、それでも30秒の演技時間があればもう少し余裕ができるのだと思います。そこで少し構成の長いスピンを入れることができるのでしょう。そのことにより、チェンジエッジを2度行うなどして、柔軟性を要するディフィカルトポジションが少なくても高いレベルを狙う構成が可能、ということではないかと思っています。

とりあえず、その内訳を見ていきましょう。

<単一姿勢スピン>

◇レベル認定なし(CSp) 1

◇レベル1(BV1.2) 2
・SSp1 1 GOE 高嵩(エリックボンパール杯) -0.12
・USp1 1 GOE ブライアン・ジュベール(スケートカナダ) 0.0

◇レベル2(BV1.5) 2
・SSp2 2 ベストGOE 高橋大輔(スケートアメリカ) 0.2
0.0≦GOE<0.5 2

◇レベル3(BV1.8) 6
・SSp3 1 GOE ケヴィン・ヴァン・デル・ペレン(GPファイナル) -0.06
・USp3 5 ベストGOE ジャマル・オスマン(スケートカナダ) 0.2
0.0≦GOE<0.5 5

◇レベル4(BV2.4) 2
・SSp4 2 ベストGOE ヤニック・ポンセロ(スケートカナダ) 0.2
0.0≦GOE<0.5 2

◎シットスピン 6(7.8%)
◎キャメルスピン 1(1.3%)
◎アプライトスピン 6(7.8%)
合計 13

<単一姿勢の足換えスピン>

◇レベル1(BV1.7) 7
・CSSp1 5 ベストGOE セルゲイ・ダヴィドフ、カレル・ゼレンカ、呉家亮(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 2
・CUSp1 2 ベストGOE グレゴール・ウルバス(ロシア杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 1

◇レベル2(BV2.0) 11
・CSSp2 8 ベストGOE スティーヴン・キャリエール(スケートアメリカ) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 3
・CUSp2 3 ベストGOE セルゲイ・ダヴィドフ(中国杯) 0.1
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 1

◇レベル3(BV2.3) 23
・CSSp3 15 ベストGOE ステファン・ランビエール(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 13
GOE<0.0 1
・CUSp3 8 ベストGOE ケヴィン・レイノルズ(ロシア杯) 0.2
0.0≦GOE<0.5 6
GOE<0.0 2

◇レベル4(BV3.0) 22
・CSSp4 17 ベストGOE パトリック・チャン(エリックボンパール杯) 0.6
0.5≦GOE<1.0 3
0.0≦GOE<0.5 14
・CCSp4 2 ベストGOE ヤニック・ポンセロ(ロシア杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 1
・CUSp4 3 ベストGOE ジェフリー・バトル(スケートカナダ) 0.6
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 2

◎足換えシットスピン 45(58.4%)
◎足換えキャメルスピン 2(2.6%)
◎足換えアプライトスピン 16(20.8%)
合計 63

<単一姿勢のフライングスピン>

◇レベル1(BV1.7) 6
・FSSp1 6 ベストGOE クリストファー・ベルントソン(スケートアメリカ) 0.2
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 2

◇レベル2(BV2.0) 14
・FSSp2 12 ベストGOE 小塚崇彦(スケートアメリカ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 9
GOE<0.0 3
・FCSp2 2 ベストGOE アンドレイ・ルータイ(ロシア杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 1

◇レベル3(BV2.3) 27
・FSSp3 24 ベストGOE ステファン・ランビエール(中国杯、ロシア杯)、ヤニック・ポンセロ、アレクサンドル・ウスペンスキー(ロシア杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 4
0.0≦GOE<0.5 20
・FCSp3 2 ベストGOE セルゲイ・ドブリン(NHK杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 1
・FUSp3 1 GOE ケヴィン・レイノルズ(スケートアメリカ) -0.06

◇レベル4(BV3.0) 27
・FSSp4 26 ベストGOE トマシュ・ヴェルネル(エリックボンパール杯)、ジョニー・ウィアー(ロシア杯) 0.7
0.5≦GOE<1.0 10
0.0≦GOE<0.5 15
GOE<0.0 1
・FUSp4 1 GOE ケヴィン・レイノルズ(ロシア杯) 0.2

◎フライングシットスピン 68(88.3%)
◎フライングキャメルスピン 4(5.2%)
◎フライングアプライトスピン 2(2.6%)
合計 74

<単一姿勢のフライング足換えスピン>

◇レベル1(BV1.7) 2
・FCSSp1 2 GOE 南里康晴(スケートアメリカ、NHK杯) -0.06
0.0≦GOE<0.5 2

◇レベル2(BV2.0) 0

◇レベル3(BV2.3) 1
・FCSSp3 1 GOE エヴァン・ライサチェク(GPファイナル) 0.2

◇レベル4(BV3.0) 7
・FCSSp4 4 ベストGOE エヴァン・ライサチェク(中国杯)、小塚崇彦(ロシア杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 2
・FCUSp4 3 ベストGOE ジャマル・オスマン(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 2

◎フライング足換えシットスピン 7(9.1%)
◎フライング足換えアプライトスピン 3(3.9%)
合計 10

<コンビネーションスピン>

・CoSp1(BV1.7) 5 ベストGOE パトリック・チャン(スケートアメリカ)、10(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 3

・CoSp2(BV2.1) 6 ベストGOE クリストファー・ベルントソン(スケートアメリカ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 3

・CoSp3(BV2.5) 16 ベストGOE 柴田嶺(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 13
GOE<0.0 2

・CoSp4(BV3.0) 21 ベストGOE ステファン・ランビエール(ロシア杯) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 9
0.0≦GOE<0.5 9
GOE<0.0 2

◎合計 48(62.3%)

<フライングコンビネーションスピン>

・FCoSp1(BV1.7) 1 GOE アルバン・プレオベール(スケートアメリカ) -0.12

・FCoSp2(BV2.1) 1 GOE 高橋大輔(NHK杯) 0.2

・FCoSp3(BV2.5) 4 ベストGOE ケヴィン・レイノルズ(ロシア杯)、高橋大輔(GPファイナル) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 2

・FCoSp4(BV3.0) 1 GOE ジャマル・オスマン(中国杯) 0.4

◎合計 7(9.1%)

<足換えコンビネーションスピン>

・CCoSp1(BV2.0) 11 ベストGOE 高橋大輔(スケートアメリカ) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 5
GOE<0.0 5

・CCoSp2(BV2.5) 9 ベストGOE ジェフリー・バトル(スケートカナダ) 0.7
0.5≦GOE<1.0 4
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 1

・CCoSp3(BV3.0) 28 ベストGOE ステファン・ランビエール(GPファイナル) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 8
0.0≦GOE<0.5 19

・CCoSp4(BV3.5) 28 ベストGOE ステファン・ランビエール(ロシア杯) 1.2
1.0≦GOE<1.5 2
0.5≦GOE<1.0 6
0.0≦GOE<0.5 19
GOE<0.0 1

◎合計 76(98.7%)

<フライング足換えコンビネーションスピン>

・FCCoSp1(BV2.0) 2 GOE 南里康晴(スケートアメリカ) -0.06
GOE<0.0 2

・FCCoSp2(BV2.5) 3 ベストGOE 小塚崇彦(スケートアメリカ) 0.4
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 2

・FCCoSp3(BV3.0) 4 ベストGOE スティーヴン・キャリエール(スケートアメリカ、NHK杯) 0.2
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 1

・FCCoSp4(BV3.5) 7 ベストGOE ショーン・ソーヤー(中国杯) 0.9
0.5≦GOE<1.0 3
0.0≦GOE<0.5 4

◎合計 16(20.8%)

さて、いかがでしょう。

キャメルスピンの認定なしはチャン選手のエリック杯の転倒スピン。本来はコンビネーションスピンとして実施される予定だったものです。
ですから、単一姿勢のキャメルスピンを試みた選手はいない、ということになります。

ランビエール選手はさすがのGOE。同じスイスのオスマン選手も、がんばっていますね。バトル選手、チャン選手とカナダ勢の名前もあがっています。彼らはやはり印象的なポジションの美しさを持っていますね。
キャリエール選手はとても速いスピンを持っているのですが、チェンジエッジをほとんどしないため、高いレベルをとるのは難しいようです。
日本人の名前は低いレベルの中に多いのが少し残念。回転数などをしっかり維持し、明瞭なポジションを練習することが求められますね。

個人的にはソーヤー選手の柔軟性を生かしただけでない個性的なスピンが印象に残ります。

スピンというのは実は非常に味のある、面白い要素。新採点になって、旧採点下では苦手なために簡単に3,4回転程度でお茶を濁していた選手もスピンに時間を割かざるを得なくなり、観客にとってもスピンの時間が苦痛な場合が多くなってきた、と言われたりもしますが、やはり優れたスピンのよさとは採点が変わっても色あせないものです。
チェンジエッジの見分けなどは難しいのですが、まずは形の面白さを楽しみつつ、レベルのことに興味がわいてきましたなら、今のところ「解説」カテゴリー唯一の記事、「スピンのチェンジエッジ」を参考にしてみてくださいませ。

2008年3月 8日 (土)

女子フリーのスピン

GPシリーズのスピン集計、続いては女子FSのスピンです。

今季からフリーの4つのスピンは全て異なる略記号のものを実施しなくてはならないことになりました。
略記号、3AとかSpSq4とかいうアルファベットと数字の組み合わせですが、これまで私は何気なく使ってきていましたけれど、プロトコルを読むのに必要なものなので、ご存じない方はぜひフィギュアスケート資料室のまとめをご覧になってください。
元から、1つは単一姿勢のスピン(フライング、足換えの有無は問わない)、1つはフライングスピン(単一姿勢、コンビネーションは問わない)、1つはコンビネーションスピン(フライング、足換えの有無は問わない)で構成されていなければなりません。これにもう一つ、どのようなスピンを加えるかに各選手の裁量が問われます。基礎点を得るための構成、プログラムに変化をつけるための構成が考えられますが、そのあたりは男女ともにまとめの中で分析してみたいと思います。

◎で記したところが同じ略記号のスピンの集計です。各スピンとも1プログラムにつき1回ということになりますから、プログラムで実施されるパーセンテージも表示してみました。
BVというのは基礎点のことです。スピンの基礎点を私はよく忘れてしまいがちなので、自分の頭の中の整理のために書き出してみました。

<単一姿勢スピン(レイバック以外)>

◇レベル1(BV1.2) 2
・SSp1 1 GOE ヴァレンティナ・マルケイ(エリックボンパール杯) 0.1
・USp1 1 GOE アナスタシア・ギマツェティノワ(エリックボンパール杯) 0.0

◇レベル2(BV1.5) 1
・USp2 1 GOE イドラ・ヘーゲル(スケートカナダ) -0.24

◇レベル3(BV1.8) 4
・SSp3 2 ベストGOE キミー・マイズナー(エリックボンパール杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 1
・CSp3 2 ベストGOE 浅田真央(スケートカナダ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 2

◇レベル4(BV2.4) 1
・CSp4 1 GOE 浅田真央(エリックボンパール杯) 0.7

◎シットスピン 3(4.0%)
◎キャメルスピン 3(4.0%)
◎アプライトスピン 2(2.7%)
合計 8

<レイバックスピン>

・LSp1(BV1.5) 11 ベストGOE 安藤美姫(スケートアメリカ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 11

・LSp2(BV1.8) 9 ベストGOE ベアトリサ・リャン(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 5
GOE<0.0 3

・LSp3(BV2.4) 13 ベストGOE アリッサ・シズニー(中国杯) 0.8
0.5≦GOE<1.0 6
0.0≦GOE<0.5 7

・LSp4(BV2.6) 8 ベストGOE キャロライン・ジャン(スケートアメリカ) 1.5
GOE=1.5(FullMark!) 1
1.0≦GOE<1.5 3
0.5≦GOE<1.0 4

◎合計 41(54.7%)

<単一姿勢の足換えスピン>

◇レベル1(BV1.7) 2
・CSSp1 1 GOE カロリーナ・コストナー(NHK杯) -0.24
・CUSp1 1 GOE 澤田亜紀(エリックボンパール杯) -0.12

◇レベル2(BV2.0) 9
・CSSp2 6 ベストGOE 許斌姝(中国杯)、カロリーナ・コストナー(GPファイナル) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 4
・CUSp2 3 ベストGOE トゥーバ・カラデミル(スケートアメリカ)、村主章枝(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 1

◇レベル3(BV2.3) 7
・CSSp3 2 ベストGOE シンシア・ファヌフ(スケートカナダ) 0.4
0.0≦GOE<0.5 2
・CUSp3 5 ベストGOE 武田奈也(スケートカナダ)、村主章枝(ロシア杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 3

◇レベル4(BV3.0) 7
・CSSp4 2 ベストGOE 金妍兒(ロシア杯) 0.4
0.0≦GOE<0.5 2
・CUSp4 5 ベストGOE ジョアニー・ロシェット(ロシア杯) 0.1
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 2

◎足換えシットスピン 11(14.7%)
◎足換えアプライトスピン 14(18.7%)
合計 25

<単一姿勢のフライングスピン>

◇レベル認定なし(FSSp) 3

◇レベル1(BV1.7) 6
・FSSp1 5 ベストGOE エレナ・グレボワ(スケートカナダ、エリックボンパール杯)、イドラ・ヘーゲル(スケートカナダ)、スザンナ・ポイキオ(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 1
・FCSp1 1 GOE 許斌姝(中国杯) 0.0

◇レベル2(BV2.0) 25
・FSSp2 15 ベストGOE 中野友加里(スケートカナダ)、村主章枝、ベアトリサ・リャン(中国杯)、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(NHK杯) 0.3
0.0≦GOE<0.5 11
GOE<0.0 4
・FCSp2 10 ベストGOE アレクサンドラ・イエフレワ(スケートアメリカ) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 5
GOE<0.0 4

◇レベル3(BV2.3) 24
・FSSp3 18 ベストGOE 中野友加里(ロシア杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 17
・FCSp3 6 ベストGOE 中野友加里(GPファイナル) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 2

◇レベル4(BV3.0) 21
・FSSp4 16 ベストGOE 浅田真央(スケートカナダ)、アリッサ・シズニー(中国杯) 0.6
0.5≦GOE<1.0 8
0.0≦GOE<0.5 8
・FCSp4 5 ベストGOE 中野友加里(スケートカナダ) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 2

◎フライングシットスピン 57(76.0%)
◎フライングキャメルスピン 22(29.3%)
合計 79

<単一姿勢のフライング足換えスピン>

◇レベル1(BV1.7) 0

◇レベル2(BV2.0) 0

◇レベル3(BV2.3) 3
・FCSSp3 2 GOE アシュリー・ワグナー(スケートカナダ、エリックボンパール杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
・FCUSp3 1 GOE カタリナ・ゲルボルト(ロシア杯) -0.18

◇レベル4(BV3.0) 0

◎フライング足換えシットスピン 2(2.7%)
◎フライング足換えアプライトスピン 1(1.3%)
合計 3

<コンビネーションスピン>

・CoSp1(BV1.7) 3 GOE カロリーナ・コストナー、ユリア・シェベスチェン、スザンナ・ポイキオ(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 3

・CoSp2(BV2.1) 4 ベストGOE アリーナ・マルティノワ、王月人(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 2

・CoSp3(BV2.5) 12 ベストGOE カロリーナ・コストナー(NHK杯)、中野友加里(GPファイナル) 0.5
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 8
GOE<0.0 2

・CoSp4(BV3.0) 31 ベストGOE 浅田真央(エリックボンパール杯) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 10
0.0≦GOE<0.5 20

◎合計 50(66.7%)

<フライングコンビネーションスピン>

・FCoSp1(BV1.7) 1 GOE サラ・マイヤー(エリックボンパール杯) 0.1

・FCoSp2(BV2.1) 0

・FCoSp3(BV2.5) 3 ベストGOE ベアトリサ・リャン(中国杯) 0.3
0.0≦GOE<0.5 3

・FCoSp4(BV3.0) 5 ベストGOE ベアトリサ・リャン(ロシア杯) 0.4
0.0≦GOE<0.5 5

◎合計 9(12.0%)

<足換えコンビネーションスピン>

・CCoSp1(BV2.0) 6 ベストGOE 村主章枝(中国杯) 0.3
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 2

・CCoSp2(BV2.5) 19 ベストGOE キャロライン・ジャン(中国杯) 0.7
0.5≦GOE<1.0 3
0.0≦GOE<0.5 9
GOE<0.0 7

・CCoSp3(BV3.0) 29 ベストGOE キャロライン・ジャン(スケートアメリカ) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 7
0.0≦GOE<0.5 19
GOE<0.0 2

・CCoSp4(BV3.5) 21 ベストGOE キャロライン・ジャン(GPファイナル) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 11
0.0≦GOE<0.5 6
GOE<0.0 3

◎合計 75(100%)

<フライング足換えコンビネーションスピン>

・FCCoSp1(BV2.0) 0

・FCCoSp2(BV2.5) 1 GOE ジョアニー・ロシェット(スケートカナダ) 0.0

・FCCoSp3(BV3.0) 5 ベストGOE ジョアニー・ロシェット(ロシア杯) 0.4
0.0≦GOE<0.5 5

・FCCoSp4(BV3.5) 4 ベストGOE 金妍兒(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 3

◎合計 10(13.3%)

いかがでしょうか。やっぱりこうして書き出してみると、スピンの種類は多くて、もう少し小分けにした方がよかったかな、という気がしてきます。
最も基礎点の高い足換えコンビネーションスピンは、さすがに全ての選手が実施しているということがわかりました。単一姿勢はやはり基礎点の高いレイバックが多めですが、さらに基礎点の高い足換えスピンや2度のフライングスピンという形にしてくる選手もいます。中野選手は得意のフライングキャメルの他にフライングシットも行う構成。やはりフライングキャメルの印象はすさまじいものがありますから、レイバックのないこともまったく気になりません。

そして、特筆すべきはジャン選手のフルマークGOEでしょうか。スピンのプラスGOEはジャッジの与える点の平均のちょうど半分になりますから、+1点でジャッジの平均は2、+1.5点でジャッジの平均は3点ということになります。他のスピンも、柔軟性を生かしたものは本当に高評価です。
ただし、単に体が柔らかいから、得点がとれているわけではありません。彼女のスピンの回転は本当に速く、どんなポジションをとっても決して速度がゆるむことはありません。同じ秒数ポジションを維持していても、5回転回れるのと3回転しか回れないのでは見栄えの点で大きく違うのです。
荒川さんは「ただストレッチで体がよく曲がるだけではなく、その姿勢をキープする筋力がなければ、美しいポジションは作れない」といつも言っています。とりわけ深いレイバックポジションから上体を起こすのに要する筋力は相当のものだと言われています。ジャン選手は片足を持って引っ張るのと同時にそれをするのですから、想像を絶します。
私は子供の頃に新体操を題材にした少女漫画でそんなことを読んでいたので、とりわけ新しい情報とは思っていなかったのですが、彼女がそれだけ繰り返し言っているのは、きっと多くの人に誤解されているところがあるためだろうと思います。ジャン選手はまだ四肢の軽さというアドバンテージがあるでしょうが、筋力あってこそ、安定したスケーティングと驚異的なポジションの両取りができている、ということができます。

真央選手も、スピンは比較的苦手な要素としながらかなりのGOEをもらっています。この総合力の高さこそ彼女の強みです。キム選手も、スピンでもしっかり得点が出せる選手です。

いつも長いエントリーがさらに長くなってしまいましたが、がんばって読んでくださった方、ありがとうございます。

2008年3月 7日 (金)

男子ショートプログラムのスピン

GPシリーズの集計、今回は男子SPのスピンです。

男子もやはりSPのスピンのお題は決まっていますが、女子のレイバックに代わり足換え単一姿勢スピンをすることになっていて、そのポジションはシットかキャメルと決まっています。しかし現実には、レベル認定を受けやすいシットスピンを行う選手が圧倒的に多くなっています。

<足換えコンビネーションスピン>

・CCoSp1 7(9.1%) ベストGOE アンドレイ・ルータイ(ロシア杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 6

・CCoSp2 16(20.8%) ベストGOE セルゲイ・ヴォロノフ(エリックボンパール杯) 0.7
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 14
GOE<0.0 1

・CCoSp3 26(33.8%) ベストGOE ショーン・ソーヤー(中国杯) 0.8
0.5≦GOE<1.0 8
0.0≦GOE<0.5 13
GOE<0.0 5

・CCoSp4 28(36.3%) ベストGOE 小塚崇彦(スケートアメリカ)、ステファン・ランビエール、ジョニー・ウィアー(GPファイナル) 0.8
0.5≦GOE<1.0 12
0.0≦GOE<0.5 14
GOE<0.0 2

<足換えスピン>

レベル認定なし(CSSp) 1(1.3%)

レベル1 6(7.8%)
・CSSp1 6 ベストGOE セルゲイ・ダヴィドフ、カレル・ゼレンカ(中国杯) 0.2
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 3

レベル2 4(5.2%)
・CSSp2 4 ベストGOE ブライアン・ジュベール(スケートカナダ) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 2

レベル3 27(35.1%)
・CSSp3 27 ベストGOE ステファン・ランビエール(中国杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 20
GOE<0.0 6

レベル4 39(50.6%)
・CSSp4 37 ベストGOE ステファン・ランビエール(GPファイナル) 0.9
0.5≦GOE<1.0 4
0.0≦GOE<0.5 30
GOE<0.0 3
・CCSp4 2 ベストGOE ヤニック・ポンセロ(スケートカナダ) 0.4
0.0≦GOE<0.5 2

足換えシットスピン 75(97.4%)
足換えキャメルスピン 2(2.6%)

<フライングスピン>

レベル認定なし(FSSp) 1(1.3%)

レベル1 6(7.8%)
・FSSp1 6 ベストGOE 南里康晴(スケートアメリカ)、ブライアン・ジュベール(スケートカナダ)、ジャマル・オスマン(中国杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 3

レベル2 15(19.5%)
・FSSp2 13 ベストGOE ジョニー・ウィアー(中国杯) 0.6
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 6
GOE<0.0 6
・FCSp2 2 ベストGOE アンドレイ・ルータイ(ロシア杯)、セルゲイ・ドブリン(NHK杯) 0.3
0.0≦GOE<0.5 2

レベル3 24(31.2%)
・FSSp3 21 ベストGOE 小塚崇彦(スケートアメリカ) 0.7
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 16
GOE<0.0 3
・FCSp3 1 ベストGOE アンドレイ・ルータイ(スケートアメリカ) 0.0
0.0≦GOE<0.5 1
・FUSp3 2 ベストGOE ケヴィン・レイノルズ(スケートアメリカ、ロシア杯) 0.1
0.0≦GOE<0.5 2

レベル4 31(40.3%)
・FSSp4 31 ベストGOE ステファン・ランビエール(ロシア杯) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 10
0.0≦GOE<0.5 18
GOE<0.0 2

フライングシットスピン 72(93.5%)
フライングキャメルスピン 3(3.9%)
フライングアプライトスピン 2(2.6%)

△足換えスピンとフライングスピンの組み合わせ▽
足換えシット+フライングシット 70(90.9%)
足換えシット+フライングキャメル 3(3.9%)
足換えシット+フライングアプライト 2(2.6%)
足換えキャメル+フライングシット 2(2.6%)

女子でもありましたけれど、シットスピンの「レベル認定なし」は、今季からのシットスピンのポジションを厳密化したルールでシットのポジションと認められなかったものです。
昨シーズンの世界選手権フリーでフライングシットをフライングアプライトと判定されてしまった高橋選手はその弱点を努力して克服し、全てのスピンで認定を受けることができました。スピンで高いGOEを獲得できる選手ではありませんが、こうしてみな、新採点のルールの下少しずつ進歩しています。

高いレベル、GOEともに獲得している選手といったらやはりランビエール選手。スピンは彼の代名詞といっても過言ではありません。ここに名前も挙がっているソーヤー選手のような、女子選手もびっくりのポジションなどは持っていませんが、それでも軸の美しさ、回転の速さ、そして時間をかけてポジション変化でひとつのストーリーを創り出すような独創性は素晴らしいものがあります。
昨年の世界選手権の後、インターネットで「ランビエール選手のフリーはパフォーマンスは素晴らしいけれど、スケートとしてはリンクを使い切れていない気がする。あまり『滑走』していない」という批判をみかけたりして、気にしてみたのですが、なんのことはない、彼はジュベール選手と比べると30秒も長くスピンに時間を費やしていたのでした。高橋選手と比べても、15秒ほど長くスピンしていました。確かにトップ選手の中では滑りにスピードのある方ではありませんが、それだけ自分の見せ所をわかっていると言えるでしょうね。

ウィアー選手、小塚選手も名前が挙がっていますね。小塚選手は回転速度が素晴らしい選手です。ウィアー選手はポジションが実に美しい、腰も深くよくフリーレッグの上がったスピンをします。

キャメルスピンはなかなかレベルのとりづらいスピンで(とりわけドーナツなどの変形の難しい男子では)、多くの選手は単一姿勢で使うことを避けるのですが、ロシアの選手はなぜか伝統的に美しいキャメルスピンを持っています。
とりわけジュニアの大会ではキャメルスピンが必須になってきますので全ての選手のキャメルが見られるのですが、ロシアの選手は若くてもいつも「さすが」と思わせてくれます。
ポンセロ選手のキャメルスピンも叙情的な彼の演技に合って優雅で素敵です。
基本のポジションもスパイラルに似て男子には難しいと思いますが、レベルをとるにはチェンジエッジ、バタフライやバックエントランス、仰向けの難しいポジションなどを駆使しなくてはなりません。しかし8回転は他の要素との兼ね合い上、なかなか使えないようです。上半身を含め身長の長さをぐるぐる振り回すキャメルはなかなか速度が出ませんので、時間がかかり、プログラムの中で時間を使いすぎてしまうのです…。
正直、もっとキャメルスピンの難度にあった独自のレベルの特徴を考えていただきたいものです。(私はルールにあまり注文をつけたい方ではないのですが、これはわりと切実)

さて、フリーの集計方法ですが、男女ごとにはスピンの種類別に数え上げ、最後に男女合わせてその組み合わせを集計してみたいと思います。今回の2つのスピンの組み合わせと違い、4つのスピンで組み合わせの可能性はかなりありますが、実際のところはそんなに組み合わせはないのでは…と踏んでいます。

2008年3月 6日 (木)

女子ショートプログラムのスピン

GPシリーズの集計、今回からスピンです。
まずは課題の設定されているSPのスピンから。

<レイバックスピン>

・LSp1 13(17.1%) ベストGOE アリサ・ドレイ(スケートカナダ) 0.6
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 10
GOE<0.0 1

・LSp2 23(30.3%) ベストGOE 中野友加里(スケートカナダ) 0.6
0.5≦GOE<1.0 7
0.0≦GOE<0.5 15
GOE<0.0 1

・LSp3 30(39.5%) ベストGOE キャロライン・ジャン(スケートアメリカ) 1.4
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 16
0.0≦GOE<0.5 12
GOE<0.0 1

・LSp4 10(13.2%) ベストGOE キャロライン・ジャン(GPファイナル) 1.4
1.0≦GOE<1.5 2
0.5≦GOE<1.0 6
0.0≦GOE<0.5 2

<足換えコンビネーションスピン>

・CCoSp1 10(13.2%) ベストGOE アシュリー・ワグナー(スケートカナダ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 3
GOE<0.0 7

・CCoSp2 15(19.7%) ベストGOE 安藤美姫(スケートアメリカ)、浅田真央(スケートカナダ) 0.6
0.5≦GOE<1.0 3
0.0≦GOE<0.5 7
GOE<0.0 5

・CCoSp3 27(35.5%) ベストGOE 中野友加里(ロシア杯) 0.8
0.5≦GOE<1.0 4
0.0≦GOE<0.5 21
GOE<0.0 2

・CCoSp4 24(31.6%) ベストGOE アリッサ・シズニー(NHK杯) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 10
0.0≦GOE<0.5 11
GOE<0.0 2

<フライングスピン>
レベル認定なし(FSSp) 1(1.3%)

レベル1 8(10.5%)
・FSSp1 6 ベストGOE エレナ・グレボワ(スケートカナダ、エリックボンパール杯) 0.3
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 2
・FCSp1 2 ベストGOE ヴィクトリア・パヴク(エリックボンパール杯) 0.1
0.0≦GOE<0.5 1
GOE<0.0 1

レベル2 15(19.7%)
・FSSp2 9 ベストGOE エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(スケートアメリカ) 0.3
0.0≦GOE<0.5 5
GOE<0.0 4
・FCSp2 6 ベストGOE アリーナ・マルティノワ(中国杯、ロシア杯)、ニーナ・ペトゥシコワ(ロシア杯)、サラ・マイヤー(NHK杯) 0.0
0.0≦GOE<0.5 4
GOE<0.0 2

レベル3 26(34.2%)
・FSSp3 17 ベストGOE 金妍兒(中国杯、ロシア杯) 0.5
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 12
GOE<0.0 3
・FCSp3 9 ベストGOE 中野友加里(ロシア杯) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 6

レベル4 26(34.2%)
・FSSp4 19 ベストGOE ベアトリサ・リャン(ロシア杯)、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ(NHK杯)、金妍兒(GPファイナル) 0.5
0.5≦GOE<1.0 3
0.0≦GOE<0.5 14
GOE<0.0 2
・FCSp4 7 ベストGOE 中野友加里(スケートカナダ) 1.0
1.0≦GOE<1.5 1
0.5≦GOE<1.0 2
0.0≦GOE<0.5 4

フライングシットスピン 52(68.4%)
フライングキャメルスピン 24(31.6%)

高得点者はジャンプ、ステップともまた違った顔ぶれですね~。
とりわけ中野選手の健闘が光ります。フライングスピンはフライングシットの方がレベルが得やすいというのが定説ですが、キャメルに自信のある選手だけがキャメルを実施するために、キャメルの方が全体にGOEが高くなっています。
キャメルがレベルを得づらいのは、変形ポジションのバラエティが少ないからです。中野選手はすばらしいドーナツスピンを持っていますが昨シーズンまでは低レベルにとどまっていましたが、同じポジションで8回転することでレベルアップという新しい認定要素に高速ドーナツスピンがばっちりハマり、レベル3やレベル4をコンスタントに認定されるようになりました。中野選手は長いときは10回転以上のドーナツスピンをまるで簡単そうにしています。
しかし、中野選手ほど8回転ルールの恩恵を受けている選手は他にいないようです…。

キム・ヨナ選手はフライングシットスピンで高得点を得ていますが、彼女も非常に軸の安定した、チェンジエッジも巧みなスピンを回ります。柔軟性がないのが難点ですが、フライングのダイナミックさで個性を出してGOEをもらっていますね。

レイバックスピンはジャン選手の独壇場。あのパールスピンからビールマンへの移行、その間まったく回転スピードが落ちず軸がしっかりしたスピンを見せつけられるとお手上げという感じです。
あと、実は韓国の選手に、非常に素晴らしいレイバックを持っている選手がいるのですが、他の要素がいまひとつで、韓国の代表にはなれていません。その選手は元祖パールスピン、そしてフライングレイバックスピンでチェンジエッジを行うなど本当に柔軟性も基本的なスピン技術も優れているのですが、スピンだけでは上位にこられないのが実に残念です。

コンビネーションスピンが得意なシズニー選手は、ポジションの美しいスピンに定評があります。

スピンは柔軟性と回転速度の両方を必要とする要素。
女子では柔軟性がより求められますが、そこそこの柔軟性でもオリジナリティがあるスピンも見たいなぁと思っています。

2008年3月 4日 (火)

女子のスパイラルシークエンス

GPシリーズの集計を再開、今回はスパイラルです。

スパイラルは最もレベル4をとりやすい要素です。しかしほんの少し保持時間が足りないだけで簡単にレベルを落としてしまう微妙な要素。そのできばえのよさは、ほとんどGOEによって決定すると言っても過言ではないと思います。

<スパイラルシークエンス>

◆SP
・認定なし(SpSq) 1(1.3%)
・SpSq1 10(13.2%) ベストGOE 浅田真央(エリックボンパール杯) 0.7
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 7
GOE<0.0 2
・SpSq3 8(10.5%) ベストGOE ベアトリサ・リャン(中国杯) 0.6
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 7
・SpSq4 57(75.0%) ベストGOE 浅田真央(スケートカナダ)、キャロライン・ジャン(中国杯) 1.8
1.5≦GOE<2.0 3
1.0≦GOE<1.5 15
0.5≦GOE<1.0 17
0.0≦GOE<0.5 20
GOE<0.0 2

◆FS
・SpSq1 5(6.7%) ベストGOE キャロライン・ジャン(スケートアメリカ) 0.9
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 2
GOE<0.0 2
・SpSq2 10(13.3%) ベストGOE キャロライン・ジャン(中国杯) 0.8
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 9
・SpSq3 8(10.7%) ベストGOE ベアトリサ・リャン(ロシア杯) 0.7
0.5≦GOE<1.0 1
0.0≦GOE<0.5 7
・SpSq4 52(69.3%) ベストGOE キャロライン・ジャン(GPファイナル) 1.6
1.5≦GOE<2.0 1
1.0≦GOE<1.5 19
0.5≦GOE<1.0 13
0.0≦GOE<0.5 19

ベストGOEはなんと3人の選手で分け合うことになりました。ここからレベル取りの極端な不安定さもうかがわれます。
とりわけジャン選手は、コーエン選手を彷彿とさせる、いや、さらに鋭いスプリットのアラベスク、安定感のあるチェンジエッジ、自在なディフィカルトポジションと、正直レベル5をつけたいような内容のスパイラルシークエンスになっています。もう少し速度があるといいかと思いますが、脚を高く上げてスピードを保つのは難しいことなのでしょう。
真央選手のショートプログラムは、最初に支持なしのファンスパイラルから入る独創的な構成になっています。支持なしのファンスパイラルはそれ自体ではレベルアップの特徴として認められなくなりましたから、今季に入って試みる選手が激減したのですが、真央選手はレベル取りの手段ではなく美しいポジションとして魅せ(これもコーエン選手を彷彿とさせます)、かつチェンジエッジを含むフォアの後ろ上げスパイラルを2種の支持ありで行うことで変化をつけています(前上げで支持なしを行っているので、後ろ上げで両方支持してもレベルがとれるという賢い構成)。大変難度の高い構成だと思いますが、確実にレベルをとるのもそれだけ難しくなっていると思います。もはやスパイラルも「休むところ」ではなくなっていますね…。
リャン選手は1拍でトップポジションに入れる素早さ(太田由希奈選手もこの点が素晴らしいです)、つま先、指先まで力強い伸びやかさ、深いアウトサイドエッジによる迫力が優れています。3番目のバックスパイラルに前上げと横上げの両方を使え、曲調に合わせてイメージを変えている点も好印象。アラベスクでの上体の位置が低く、ポジションの優雅さという点では前2者に及びませんが、単に優美というだけではない女性の身体の力強さを表現できている点が個性的であると思います。

さてさて、最後にスピンのまとめになりますが、まだどのようにまとめていくか思案中です。ショートはまとめやすいのですが、フリーをどう分類していくか…

2008年3月 3日 (月)

ワールド・フィギュアスケート 32

普段は立ち読みが多くてちょっと手が出ない雑誌なのですが、今号は買ってみました。

試合の写真などは私はインターネットとかで見てしまうので、手元にあまり残しておきたいという気持ちがないのですが、この雑誌は選手や各国の関係者へのインタビューがたくさんあるのがとてもいいです。
ただこの試合はどうだったということだけではなく、どのような環境で練習を積んでいるか、スケートに対してどのような情熱を抱いているのか、そういったことが見えてくる興味深いインタビューも数多くあります。

Book ワールド・フィギュアスケート 32 (32)

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今回ここで取り上げたい記事は天野真さんのインタビュー。
今季変更になったいくつかのルールに関するコメントの中に、くだんの不正エッジ判定に関するものがありました。コーラーによって不正エッジに対する考え方も少し違う、としたうえで、天野さんの場合は踏み切りのとき深く間違ったエッジに踏み込んでしまう場合のみを判定しているようです。
Daysの岡崎さんも同様のことを述べていましたが、コーラーは「スケーター」に対してe判定はしていません。同じスケーターでもそのときそのときで踏み切りは違う、という考えが一般的なようです。
他にもスパイラルやスピン、ステップなどの話が出てきました。ジャンプについて、高難度ジャンプの基礎点は今のままで十分ではないか、というコメントもしておられました。
もう一つ非常に興味深い話題が、スケーティングのよさには3つのポイントがある、というお話。
一つはストレートでの加速力
一つはインアウトのエッジの深さ
一つはエッジの前後の変化
ということです。ステップで高い評価を受ける選手でもどこか1つくらい弱い部分があるそうですが、どれも使いこなしているのは小塚選手だと評しています。確かに彼のサーペンタインステップは惚れ惚れするほどスムーズでスピードがあって気持ちいいんですよね。他のトップ選手に比べて体を大きく使えているわけではないのに、ものすごい迫力があります。
エッジの前後の変化というのはちょっと難しいのですが、以前恩田さんが高橋選手のスケーティングを評したとき「氷に力を伝えるのにブレードのカーブを使っている」というようなことを言っていて、なにやら非常に納得したことがありました。それに近い感覚なのかな、と思っています。今後ビデオなどで研究してみたいですねー。

まあ私の解釈よりご本人の説明をちゃんと読んだ方がきっと理解できますよー、ということで。

その他にももりだくさんのインタビュー。どのインタビューがよかったかとか、かいつまんではちょっと説明しきれないくらい。ランビエール選手の振付師、サロメ・ブルナーさんなどのお話をかなり興味深く読みました。

専門誌はやっぱり、結構なお値段ですが、なにしろ話題満載写真満載ですから、興味のある方はぜひどうぞ。

2008年3月 2日 (日)

「環境整備」って話が出たので

ジュニア選手権の結果を受けて、日本では練習環境の整備も大切なのでは、という話をしましたが、ひとつ紹介しておきたいサイトを。

高橋大輔選手が育ったリンク『サンピア倉敷』、厚生年金の保養施設の一部だったこのリンクは、施設の経営難により競売にかけられたのですが、入札が不調に終わり、3月末での閉鎖の可能性が濃厚になっています。

しかしこのリンクは、倉敷市民をはじめ、この地域の競技スケーターにとっては大切な拠点になっているリンクです。施設全体は赤字でも、このリンクだけで見れば黒字だということもあって、せめてスケートリンクだけでも早くに再開することができないか、という倉敷の有志の方々が、『倉敷のスケートリンクの存続を願う会』を発足させました。
http://www.a-sky.info/index.html
こちらがそのホームページです。リンクの再開を希望する署名などを募っています。また、オリンピック選手を出したほどの施設でも閉鎖と隣り合わせという、日本のスケートリンクの現状を知るというだけでも意味があると思います。どうぞご覧になってください。

ただ外側から支援するだけでなく、自分たちでもスケートを身近なスポーツとして楽しむことも大切ですね。私もしばらくリンクに足を運んでいませんが、また滑りたいなぁと思う今日この頃。
また、アイスホッケーなんかの観戦も乙ですよ。リンクに困らない国や地域というのはアイスホッケーがプロリーグとして成立している国、とも。
1ファンとしてできる範囲ではありますが、日本のスケートリンクを応援していきたいものです。

スケート年齢-女子編

ジュニア女子の結果が出ました。アメリカは本当にタレント揃いですねー。
日本勢も頑張りましたがちょっと残念な結果。でも一時期が良すぎたのであって、こんなこともあります。練習環境の整備など、私たちも外側から支援していけるといいのですが。

で、一昨日男子をまとめましたスケート年齢の女子編。やっぱり女子は本当に早熟ですねー。そして、長くやっている人が少ないという残念な面もあります。
もちろん、プロで活躍する道があるわけですから、身体能力の高い時期にスポーツとして、表現力が成熟してきたらショーとして滑る、という風になるのは自然な成り行きかと思います。でも経済的な理由で引退する人だって少なくはないでしょうし、アマチュアでも社会人として競技を続けるための社会的な支えも、きっと必要なのではないかと思います。

では表です。

・1977-78 (今シーズンのはじめ、2007/7/1に満29才)
77/07-77/12
78/01-78/06 アリサ・ドレイ

・1978-79 (28才)
78/07-78/12
79/01-79/06

・1979-80 (27才)
79/07-79/12
80/01-80/06 アナスタシア・ギマツェディノワ

・1980-81 (26才)
80/07-80/12 村主章枝
81/01-81/06 レスリー・ホーカー、ユリア・シェベスチェン

・1981-82 (25才)
81/07-81/12
82/01-82/06

・1982-83 (24才)
82/07-82/12
83/01-83/06 スザンナ・ポイキオ、イドラ・ヘーゲル

・1983-84 (23才)
83/07-83/12 アンネッテ・ディトルト
84/01-84/06 アンナ・ユルキーヴィクツ、カレン・ヴェンフイゼン、サラ・マイヤー

・1984-85 (22才)
84/07-84/12 劉艶
85/01-85/06 方丹、トゥーバ・カラデミル、鈴木明子

・1985-86 (21才)
85/07-85/12 中野友加里、ヴィクトリア・パヴク
86/01-86/06 ジョアニー・ロシェット、グウェンドリーヌ・ディディエ、ヴァレンティナ・マルケイ

・1986-87 (20才)
86/07-86/12 ジェナ・マコーケル、太田由希奈
87/01-87/06 カロリーナ・コストナー、アリッサ・シズニー

・1987-88 (19才)
87/07-87/12 アレクサンドラ・イエフレワ、安藤美姫
88/01-88/06 シンシア・ファヌフ、ベアトリサ・リャン、ラウラ・レピスト

・1988-89 (18才)…今年のジュニア大会の上限
88/07-88/12 ネッラ・シマオヴァ、浅田舞、許斌姝、ヴィクトリア・ヘルゲッソン、ミレーネ・サムソン、キーラ・コルピ、タマル・カッツ、澤田亜紀、金彩華、武田奈也
89/01-89/06 エミリー・ヒューズ、ミラ・リュン、カタリナ・ゲルボルト、エレナ・グレボワ

・1989-90 (17才)
89/07-89/12 キミー・マイズナー
90/01-90/06 エレーネ・ゲデヴァニシヴィリ、カトリーナ・ハッカー、石川翔子

・1990-91 (16才)
90/07-90/12 ステファニア・ベルトン、金妍兒、浅田真央、キセニア・ドロニナ、金娜英、アレーナ・レオノワ、水津瑠美
91/01-91/06 アシュリー・ワグナー、王月人

・1991-92 (15才)…今年のシニア選手権の下限
91/07-91/12
92/01-92/06 ニーナ・ペトゥシコワ、ジェニ・ヴェヘマー

・1992-93 (14才)…今年のシニア大会の下限
92/07-92/12 レイチェル・フラット、クリスティン・ムサデンバ
93/01-93/06 長洲未来、キャロライン・ジャン、ヨシ・ヘルゲッソン

・1993-94 (13才)…バンクーバーオリンピック出場資格の下限
93/07-93/12 サラ・ヘッケン、西野友毬
94/01-94/06

例によってカタカナ読みのアヤシイ選手は、ご容赦願います。ところで、私、男子選手よりも女子選手の方が、名前と演技の一致する選手が少ないという事実が明らかになってしまいました。勉強不足ですね…
CSで見ている方ならそういうことはないのでしょうが、BSデジタルまでの我が家ですとなぜだかそういうことに。ジュニアの選手が次々出てくるのもきっと要因かと思うのですが。

続いてジュニアチャンピオンのスケート学年です。

レイチェル・フラット 2年生
キャロライン・ジャン 1年生
金妍兒 2年生
浅田真央 1年生
安藤美姫 3年生
太田由希奈 3年生
アン・パトリス・マクドノー 3年生
クリスティナ・オブラソワ 3年生
ジェニファー・カーク 2年生
ダリア・ティモシェンコ 5年生

新採点になってから年齢が下がりましたね。旧採点では3年生のチャンピオンが多かったのに、新採点では2年生までに芽が出ないとニューフェイスが次々と現れて…という展開。
日本勢3連覇を含むアジア系の時代も、今年は一休みといったところ。

一つの立場にとっていい時代ばかりは続きません。でも悪い時代ばっかりも続きません。そうやって各国の連盟同士、選手同士が切磋琢磨しあって、何事も向上していくのだと思います。

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