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2008年3月23日 (日)

ザヤックルールとコンビネーション回数制限・前編

世界選手権、全てのメダリストが決定しました。泣いた選手も、笑った選手も、全ての選手達に、御苦労様と言いたいです。1年間私も涙あり笑いありのシーズンを過ごさせてもらいました。
エキシビションに出る選手達は、是非是非最後にはっちゃけていただきたいですね!

レビューを何か書こうと思ったのですが、演技を見返しているといろんな思いが交錯してなかなか言葉にできません。

でも、以前から書こう書こうと思っていて機会を失っていたことをこの機に書いておきたいと思います。基本的なルールのお話。結構、この検索ワードでこちらにいらしている方もいるようなので。
やっぱり私は演技そのものに何かを言うよりルールや一般論から入って実例を挙げていく方が饒舌になるようです…

俗にザヤックルールと呼ばれているルールは、「フリースケーティングにおける同じ種類のジャンプの回数制限」に関する3つの基本的な約束事のこと。ファーストエイドの文章では2文くらいでまとめられていたと思いますが、実際的な違反や抵触ということに注目すると3つの約束と覚えておくとわかりやすいのです。
で、その3つの約束事とは以下のもの。

1) 3回転以上の同じジャンプ(※種類と回転数がまったく同じジャンプ)3回以上跳んではいけない。3度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

2) 3回転以上のジャンプで3種類以上同じジャンプを複数回跳んではいけない。3種類目の2度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

3) 3回転以上の同じジャンプを2度跳ぶときは、少なくとも1度はコンビネーションジャンプかジャンプシークエンスにする。どちらも単独で実施された場合、後に実施したものをセカンドジャンプ不明のジャンプシークエンスとして扱い、コンビネーション、シークエンスとして数えることにする。

1つめの約束事に違反してしまった選手は、GPシリーズにいました。スケートアメリカのルータイ選手です。
ジャンプ構成をあげてみましょう。

1 3A
2 3T+3T
3 3A+2T
4 3Lz*+3T* (無効要素)
5 3Lo
6 2F
7 3S
8 2A

ルータイ選手は4回転のコンビネーションを跳ぼうとして、回転が抜けて3回転になってしまったようです。そのフォローを適切にすることができず、次の3-3の全てが無効要素になってしまいました。本当にこのミスは痛い。4回転が跳べなかったから、せめて3回転をたくさん跳んで…と考えると、かえってドツボにはまってしまうのです。
4回転がらみのこういったミスはありがちなもので、GPファイナルの高橋選手はこの違反をおそれてセカンドトリプルを跳べなくなってしまったということがありました。実際には次に単独の4回転を跳んだのでセカンドトリプルを跳んでも大丈夫だったし、跳んでおけば優勝できたのですが…こういう微妙なところで勝負が決まってしまうリスクが、4回転にはあります。

2つめの約束事に違反した選手は世界選手権の男子にいました。アントン・コヴァレフスキー選手です。
こちらもジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 3F+3T+2Lo
2 2A
3 3Lz+3T
4 3Lo
5 3Lz
6 3F* (無効要素)
7 3S
8 2A

6番目のフリップは3種類目の複数回ジャンプです。最初を3-3-2ではなく3-2-2にすればよかったのですが…できるだけたくさんジャンプを跳びたいと思うからしてしまう新採点システムの罠ですね。セカンドトリプルに自信があるけれど、単独の高難度ジャンプの跳べない選手がこのような失敗を犯してしまいがちです。

最初の違反も次の違反も、コンビネーションのセカンドジャンプが絡んでいますが、実際にこういうパターンが非常に多く、ファーストジャンプだけでのザヤックルール関係のミスはとても稀です。
おまけに3つめの約束事が非常にコンビネーションに関わりが深いため、よくコンビネーションの回数制限違反とザヤックルールは混同されがちになります。けれど理屈の上ではコンビネーション回数制限とザヤックルールは異なるものです。3つめは「抵触」するだけで「違反」して何かが無効になることはない約束事、と私は覚えています。

ここでは区別をつけるために、3つめの約束事だけに抵触し、コンビネーションの回数制限には違反しなかった例として、日米対抗の高橋選手のジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 4T
2 4T+SEQ
3 3A
4 3A+SEQ
5 3F
6 3S
7 3Lz
8 2A

このとき高橋選手はまったくコンビネーションジャンプを跳べませんでしたが、ルール上ジャンプシークエンスを2回行っているという扱いになります。ジャンプシークエンスは基礎点が0.8倍になってしまうので、コンビネーションにできないというのはかなり大きな失敗になってしまいます。
ランビエール選手などはジャンプが乱れても意地でセカンドジャンプをつけてきていますが、そういうことができるならしておくことは、実は基礎点の上で大切なことです。
私の記憶に残っている素晴らしいリカバリーは、06年エリックボンパール杯の安藤選手の演技です。

1 3Lz
2 3S
3 3F
4 3Lz+2Lo
5 3T+2Lo+2Lo
6 3F+2Lo
7 2A

最初に跳ぶのが3Lz+3Loのコンビネーションのはずでしたが、ファーストジャンプで転倒してしまいました。けれども安藤選手は、後半の2度目のルッツをコンビネーションにしてきました。これは2度目のルッツだからこそ意味のあるリカバーであり、他のジャンプにつけたのでは無意味どころか逆効果でした。2度目のルッツはセカンドをつけようがつけまいが、コンビネーション、シークエンス扱いになってしまい、コンビネーション3つの枠を1つ埋めてしまうからです。
2度の同じジャンプの片方を含むコンビネーションでの失敗は、成功しようが失敗しようが絶対にコンビネーション枠を1つ使ってしまうこと、1つの基礎点が0.8倍になってしまうことの両面で痛いのです。ただ単に、セカンドジャンプの得点を失うというだけの話ではない。ザヤックルールの3つの約束事の中で、実は最もわかりにくく、それだけに損をしやすいのがこのルールなのです。
もし安藤選手がルッツを単独のままにしていれば、基礎点は5.28点でした。これをコンビネーションにしたために、8.25点の基礎点を得られ、基礎点を3点近くリカバーできたのです。急なことだったためか着氷が乱れてしまいましたが、GOEで取り返そうとするよりは効果的なリカバーだったはずです。
実際、こういったリカバーはコンビネーションの大技を持っている選手はよく練習してあって、しかも極力シンプルなリカバリーで済むように構成してあるものです。それにしても安藤選手は見事でした。

しかし、高橋選手の構成は、リカバーのしようがない構成でした。2回跳ぶ4回転とトリプルアクセル、どちらも2回目のジャンプの方がコンビネーションになっているからです。ファーストジャンプで転べば必ずセカンド不明のシークエンスになって終わりです。後半にトリプルアクセルのコンビネーションをもってくる意図は理解できるのですが、4回転のコンビネーションを2回目にしていたのは戦略的にはリスキーなものだったといえます。多分、心理的に跳びやすい順に並べていたのでしょうが…。

まずこのエントリーではこれまで。
昨日の男子フリーで3人も失敗したコンビネーション回数制限違反については、後半エントリーに詳しく解説していきたいと思います。

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コメント

こんばんは!前回はスピンでのお返事ありがとうございました。
JSportsではほどほどに追いかけて観ました。本当に眠かったです(笑

私もザヤックと回数制限は混同してました。分かってたつもりでしたが整理して頭に入れ直す事ができました。
今回高橋選手が最後のルッツをコンビネーションにした時は、「あっ!」とビックリしました。そして説明しても分からないダンナに興奮して説明してしまいました。

気になってトリノシーズンの全日本の織田選手のプロトコルも見てみました。

1 3A+3T+3Lo
2 3Lz+2T
3 3S
4 2A+3T
5 3F
6 3Lo
7 2A
8 3Lz

この時はザヤックにひっかかったのですね。(間違っていたら教えてください)いつもは最初のコンビネーションは2Loを跳んでいたのに、3Loにしてしまったのですね。う~ん、ほんとに残念。
同じ間違いをしてるのかと思っていたのですが、昨年の世界選手権はコンビネーションの回数制限だったのですね、よく分かっていませんでした。


今季の高橋選手も跳べる時にコンビネーションにしておけばいいのに、と思います。思うだけなら簡単でいろいろあるのでしょうが。


世界選手権のレビューもぜひお願いします。なっつさんの感想を聞いてみたいです。
私は一言で言うと「世界選手権は本当に難しい」という感想です。この緊張感、難しい状況で荒川選手は世界選手権でもオリンピックでも自分の力を出し切ったのだと思うと、本当に驚きです。

うりさん、こんにちは。
インターネットの回線がちょっと不具合を起こしてしまい、お返事が遅れてしまいました。

織田選手は本当に簡単にセカンド、サードジャンプにトリプルを跳んでしまいますので、その分ザヤックルールに引っかかりやすいようです。ルールの中身は少し違っても、コンビネーションの制限に引っかかってしまうのも同様のことなのでしょう。
3-3-3の異名をとるヴァン・デル・ペレン選手もやはりコンビネーションの制限にひっかかりやすいという印象があります。
しかし、どの選手にしても、大舞台や大きな正念場に非常に強い緊張を感じながら「自分にできるせいいっぱいを見せたい」と必死だからこそこういった失敗をしてしまうわけで傍から思うほど単純なことではないのだろうと思います。

このルールの理解に関しては、資料室さんのブログに試験がありますので、理由を一つずつどれに違反しているか考えながら解いてみるといいかもしれません。
http://d.hatena.ne.jp/tac3g/20061213
答えはすぐ次のエントリーにあります。

世界選手権の感想については、各種目を駆け足で、ということになりそうです。
本当にシーズンで一番の大きな大会は何が起こるかわかりません。
もちろん、病気や調子の良し悪しといったどうにもできない運もありますが、失敗があっても完璧に自分の今できることに集中しきった真央選手にしろ、4回転はあえて諦めてフリーをまとめきったバトル選手にしろ、完璧に満足行く現状とはいかなくても自分のできることを見極めて過不足なく力を発揮した選手が勝ったという印象です。
本来十分な経験がなくてはなかなかこういった段階には進めないものですが、真央選手はきっと本当に真剣にスケートや、自分自身の精神的な課題を見つめてきたのでしょうね。
(といって、真剣であれば絶対に克服できるということでもないのですが)

荒川さんは、本当にアップダウンが激しくてつかみ所のない選手でしたが、自分の現状をよく把握して試合に臨んだことが好結果をもたらしたのだと思います。クワン、スルツカヤ、コーエンら華やかな選手達と同世代で、その陰にいながら、成功しても失敗しても自分の演技をし続けてきたからこそ可能だった偉業ではないかと思います。

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