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2008年5月

2008年5月18日 (日)

2008年ISU選手権の統計

また日が空きました。まあオフシーズンですのでじっくりいきましょう。

今回はシニアのISU選手権3大会(欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権)の得点傾向の統計を出してみました。
GPシリーズのときはPCSのみ簡単に大会ごとの得点傾向の違いを出してみたのですが、この選手権3大会は出場選手のレベルも違いますし、地域色で出場選手の個性も微妙に違います。もちろんジャッジの採点方針も微妙に違っていると思います。
平均点や標準偏差、得点分布などを集計して大会の特徴の違いを分析してみよう、というのが狙いです。これから先また要素の集計をしてみたいと思いますので、その判定の背景などを理解してもらえれば、と思います。

対象はフリーを滑走し得点がついた選手。棄権者のある大会や、地元1枠ルールのフリー進出者がいる大会もありますので、その人数は大会によってまちまちです。とにかく、ショートのみの選手は集計がややこしくなるので含みませんでした。

※(標準偏差とは:数字のばらつきの平均のこと。高いにしろ低いにしろ平均点から離れた得点の人が多いほど、標準偏差は大きくなります)

☆女子☆

<ショートプログラム>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差
世界選手権      29.34      4.03    23.42     3.26
欧州選手権      26.98      4.91    20.60     3.61
四大陸選手権    24.93      6.32    19.96     4.84

<フリー>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差
世界選手権      48.30      9.26    47.06     7.71
欧州選手権      44.70      8.18    41.61     8.34
四大陸選手権    44.36    14.36    40.12    10.47

<総計>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差 (GOE)
世界選手権      77.64    11.56    70.48    10.85  -0.12
欧州選手権      71.68    12.55    62.21    11.85  -1.17

四大陸選手権    69.29    19.69    60.08    15.23  -2.42

TES平均値の要素別内訳
TESの得点分布
PCS平均値の項目別内訳
PCSの得点分布
(クリックするとグラフを表示します)

女子では、四大陸と欧州の平均点の差はわずかですが、標準偏差では欧州が世界選手権とほとんど変わりないのに対して四大陸ではかなり大きな値になっていることがわかります。日本やアメリカといった非常にハイレベルな女子選手達と、中南米やオセアニア、アフリカといったスケートの盛んでない国の選手達が混在する大会なため、分布のグラフの黄色や緑の部分が少なく、赤や青が多いのです。
逆に欧州選手権では、同じくらいのレベルの出場国が非常に多いため、得点が団子状態になっている、といえます。

★男子★

<ショートプログラム>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差
世界選手権      36.36      4.37    31.77     4.87
欧州選手権      31.37      4.29    26.99     5.73
四大陸選手権    28.89    10.89    27.25     7.80

<フリー>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差
世界選手権      64.74      9.06    63.61     9.56
欧州選手権      57.09    11.04    55.93    12.40
四大陸選手権    53.81    18.98    55.60    16.02

<総計>
             TES平均 標準偏差 PCS平均 標準偏差 (GOE)
世界選手権      101.10    11.47    95.38    14.26  0.63
欧州選手権      88.46    14.08    82.91    17.91  -2.96
四大陸選手権    82.70    29.03    82.85    23.77  -1.68

TES平均値の要素別内訳
TESの得点分布
PCS平均値の項目別内訳
PCSの得点分布

男子では女子よりも4大陸選手権のレベルがさらに落ちます。
女子では日米加中の4カ国に加え韓国、ウズベキスタン、台湾などもコンペティティブなレベルの選手を輩出していますし、世界選手権のフリーにすすめないような国の選手も、国から複数名出場したりと、競争がきちんとある状態になっています。しかし男子では日米加中の4カ国の他はせいぜいカザフスタンの選手が世界選手権のフリーに進んだくらいですし、その他の国ではそもそも選手がほとんどおらず、全員がフリーに進出できる人数しか参加していません。
まだまだ、そういった国々ではフィギュアスケートが男の子のスポーツとして認識されていない、ということなのでしょうね。時間もお金もかかるスポーツですし。
当然標準偏差も大きいです。分布のグラフを見てもらうとわかるのですが、ヨーロッパ選手権ではメインの層である中間くらいのレベルの選手が、四大陸では非常に少ないことが窺えます。

男女ともに言えるのは、世界選手権の得点で目立って高いのはやはりジャンプの得点だ、ということです。スピンやステップなどの得点は大会ごとの大きな違いにはなっていません。また、PCSでも大きな違いがみられますね。
ステップの基礎点変更などでこの傾向がどう変わってくるのか、このあたりが興味深いですね。

このように、大会ごとにいろいろと個性の異なる大会のデータをいっしょくたにして今後集計をとっていきます。一応大会ごとの数字も参考に載せるかもしれませんけれど…
ついでに、異なる大会の得点は簡単に比較できない、ということも、こういったデータから感じ取っていただければと思います。

2008年5月 4日 (日)

ISU Communication1494 その3

ルール変更、最後に要素のレベル基準の変更点について。

◆ステップ
・ターン、ステップの種類について、レベル2では簡単な多様さ、レベル3では多様さ、レベル4では複雑さを満たしている。
(旧・ターン、ステップの種類について、レベル2、3では多様さ、レベル4では複雑さを満たしている)
・ロッカー、カウンター、ツイズル、すばやいステップを組み合わせ、逆方向の回転のものを直ちに続けて行っている。
(旧・ロッカー、カウンターやツイズル、すばやいトウステップを組み合わせ、逆方向の回転のものをすばやく続けて行っている)

◆スパイラル
3つのポジションを異なる足、進行方向、エッジで行うことはレベル3以上の必須要項である
(かつてはレベルが1つ上がる特徴であったが、今後はレベルが上がる特徴としては数えず、しかしこれを満たさなければレベル3以上にはならない最低条件となった)
6秒間同じ姿勢を保つ
(上の、なくなったレベルを上げる特徴に代わり、新たに加わった項目)

◆スピン
(これまでは単一姿勢のスピン、フライングスピン、足換えスピン、コンビネーションスピンなどと、スピンの種類ごとに異なる項目でレベルの認定基準が決まっていたが、今後は統一される。その中で)
2つめの難しい変形
 →足換えなしの単一姿勢スピンでは、最初と異なるもの
 →それ以外のものは、最初と異なる基本姿勢(コンビネーション)、異なる足(足換え)で行ったもの
(これまで、足換えなしのコンビネーションスピンの難しい変形は基本姿勢ごとに認められていたが、今後は3つの基本姿勢を入れていても中間姿勢を含め2つの難しい変形しか認められなくなった)
・同じポジションにおいて両方のエッジでのスピン(あらゆるスピンで1回だけ認める
(これまでは、足換えスピンではそれぞれの足で1回ずつ認められていた)
・姿勢やエッジを変えずに8回転(キャメル、シット、レイバック、アプライトの難しい変形で)(足換えスピンではそれぞれの足で1回ずつ、計2回まで認める
(これまでは、全てのスピンで1回だけ認められていた)

<注釈>

◇ステップ
ステップの種類:トウステップ、シャッセ、モホーク、チョクトー、チェンジエッジ、クロスロール
ランニングステップがなくなった
簡単な多様さ:6つ以上のターンと4つ以上のステップを含む。ただし同じ種類のステップは2回までしか数えない
多様さ:8つ以上のターンと4つ以上のステップを含む。ただし同じ種類のステップは2回までしか数えない
(旧/多様さ:4種以上の異なるターンと2種以上の異なるステップをそれぞれ2回以上含む)
(多様さに関して、種類の最低数としては新旧同じだが、新しいルールでは種類を増やせば、1種類あたりの回数を1つにできるものも増えるので、選択肢が増した。たとえば旧ルールではスリー、ブラケット、カウンターをそれぞれ2回、ロッカーとツイズルを1回ずつではターンの多様さは認められなかったが、新しいルールでは全てで8回のターンを行っているので多様さが認められる。簡単な多様さではさらにハードルは低くなっている)

◇スパイラル
チェンジエッジには変更の前後のポジションで最低3秒ずつの保持が要求される。また、チェンジエッジは1メートルの間に行われなければならない

◇スピン
3つの基本ポジション:キャメル(フリーレッグの膝下を後方に腰より高く上げたもの。しかし、レイバック、ビールマン、同じような変形はアプライトとみなされる)、シット(お尻の下を軸足の膝の上部より低くするもの)、アプライト(軸足の膝が伸びているかほとんど伸びていて、キャメルポジションではないもの)、中間姿勢(これら3つの基本姿勢にあてはまらないもの)
フライングスピン:ステップオーバー(フライングの着氷の際バランスを乱してフリーフットに完全に乗ってしまうようなミス)の場合、ショートプログラムではレベルは1を越えない。フリーでは、この入り(難しい空中姿勢や、踏み切りと同じ足での着氷)がレベル上げの特徴と認められない
 

簡単に振り返って参りましたが、まず、ステップでは種類の規定はレベル2、3で易化しました。回数をそんなに頑張らなくても、組み合わせ方や体の動き、正確さで頑張ればきちんとレベル2がとれますよ、という感じです。さすがに誰も彼も下手な鉄砲状態で長々とステップを踏む傾向に「何か違う」と感じる関係者が増えたということでしょうか。
もう一つ、逆方向の回転を組み合わせる規定ですが、これは正直私はいまだ旧の基準もきちんと飲み込めていません。変更点の部分については、スリーとブラケットやオープンチョクトーとクローズチョクトーを連続で行っても認定はされないでしょうから、やはり速いfull body rotationを伴うステップに限定してのものか、と思われます。可能性としては旧来の回転するトウステップに加えダブルスリーターンやループなどでしょうか。

スパイラルに関しては、難化といえます。
これまでは足、方向、エッジのバラエティをそろえることはレベル上げの最も一般的な特徴でしたが、これがなくなることによって、今まで難しい変形を1回、チェンジエッジ、スプリットポジション(あるいは2度目の難しい変形)でとれていたレベル4にもう一つ何かを加えなければならなくなります。
しかし、難しい変形を2回とした場合、それがどちらも手で支持した姿勢なら、もう一回は必ず支持なしの姿勢を入れなければなりません(3つのポジションが全て支持ありの場合、レベルは1になってしまう!)。ですからこれが可能なのは、支持なしでのスプリットポジションや支持なしでの難しい変形が可能な、とりわけ体の柔らかい選手だけです。
ところが、既存のもう一つの特徴、支持なしでフリーレッグのポジションや進行方向を変える、というものは、チェンジエッジと同時には成立しません。(3つのポジションをつなぐ2度のつなぎのうち最低1回は足換えでなければならないので(足を換えないとレベル2以下になってしまうから)、残り1回、どちらかを選んで行うことになる)
そこで登場するのが、6秒間の保持です。これであれば、完全なスプリットのできない選手でも通常のアラベスクポジションで十分レベルを上げることができます。しかしそんなに易しいことではありません。通常のアラベスクポジションは、ほとんどの場合その前後にチェンジエッジを行います。十分にスピードを保持し、すばやくチェンジエッジを行って前後で合計9秒以上スパイラルを行うには、それなりにスケーティングの技術を要します。
あるいは足を換えた後のバックスパイラルで6秒のキープをするとか、バックでチェンジエッジして足を換えてからフォアで6秒のキープをするとか、難しさを分散することもできるでしょう。どちらにしても、全体に負担は増えます。
これまで個性的なシークエンス構成に果敢に挑戦したり、プログラムごとに違うことに挑戦していた選手達であれば、対応も早いでしょうが、毎年レベル4テンプレートを作ってそれだけをしてきた選手ですと、やはりこの夏猛練習が必要かもしれません…。

スピンでは、高い頻度で行われていた変形、チェンジエッジに制限が加わることで、他のレベル上げの特徴ももっと積極的に活用して個性的なスピンにするように、という意図があるように感じられます。
3つの基本ポジションというのがあるコンビネーションではさほど変化はなさそうですが、単一姿勢のレベル4も得点が少し上がったことで、いろいろなことに挑戦しがいが出てきていると思います。個性的なスピンが少しでも増えるといいですね。

これで今回のルール変更に関する解説は終わりです。何か質問、ご感想がありましたら、私もわからないことは多々ありますけれど、コメント欄にお気軽にどうぞ。

ISU Communication1494 その2

今回のルール変更について、続いてはミスに対するGOE減点のガイドラインを見ていってみましょう。

◆単独ジャンプ
・SPにおいて、要求される回転数より少ない(回転不足によるダウングレードは含まない) GOE-3
・1/4以内の回転不足 -2 →  -1~-2
質の悪い踏み切り -1~-2

◆コンビネーションジャンプ、ジャンプシークエンス
・SPにおいて、要求される回転数より少ない(回転不足によるダウングレードは含まない) GOE-3
両方のジャンプがダウングレード -1~-3,-GOE → -3,-GOE
一方のジャンプがダウングレード -1~-3,-GOE → -1~-2,-GOE

◆スピン、コンビネーションスピン
・質の悪い足換え(たとえばシットスピンの足換えで中間姿勢になってしまうようなもの) -1~-3

◆ステップ、スパイラル
パターン全体の半分未満しかステップ、スパイラルをしていない -1~-3

いかがでしょう。実はちょっと私自身、意味がよくわからない箇所があります。
というのは、「質の悪い踏み切りって?」ということ。不正エッジ、両足踏み切りに関する減点は依然として存在します。となれば、踏み切りのタイミングより回転開始のタイミングの方が早い、あるいは踏み切りをしてからブレードが完全に離氷するまでにかなり回転が進んでいるようなタイプのジャンプのことを指しているのだろうか、と思うのですが。この点はちょっと謎です。

他にちょっと慣れない項目は、ステップ、スパイラルの減点の部分でしょうか。シークエンスと言うにはちょっと間延びしてスカスカであることを、パターンの長さで測るという基準を持ち出した点です。
昨シーズンまではこれを時間の長さで測っていましたが、減速したステップなどを長々と続けるよりは同じ距離を猛スピードで駆け抜けてもらった方が、ずっと見栄えはいいものです。
たとえばリンクの端から端までスパイラルで10秒かかる人と5秒かかる人がいたとしたら、後者の人の方が技術は高いといえます。しかし、そこで足を変えてポジションを変えるのにかけられる時間が、前者は10秒とたっぷり、後者は5秒と余裕がないのでは、後者の方が損をしてしまうことになります。ですからスパイラルをしていた時間ではなく、その距離を引き合いに出したと思われます。

ダウングレードについて、コンビネーションでは一方のジャンプのダウングレードと両方のジャンプのダウングレードの項目を分割しました。
これはたとえば3F<+2Tよりも3F<+3T<の方が、他の観点を除けば低い得点になる、ということです。回転不足の程度にもよりますが、1つのジャンプのみのダウングレードに対する減点は現在よりも軽減された、という見方もできますが、2つダウングレードなら程度にかかわらず転倒のような大きなミスと同程度の減点をすべき、というのはなかなか厳しい見解だなぁと私は思いました。

ここからは少し本題から逸れます。
しかしダウングレードというのは、ありがちな、傍目には目立たないミスではありますが、「そもそもそのジャンプとして成立していない」、ジャンプの定義そのものに反するミスではあるのです。エッジのサイドを使わずまっすぐのスパイラルをしても、レベルをとられないのと同じようなものです。
ですから甚だしい回転不足のジャンプを「そのジャンプを跳んだ」ものとして容認するという考え方自体が、スケートの正しい技術を否定している、という冷たい見方をすることもできます。
とりわけ、回転不足での転倒。回転不足の転倒は、踏み切る技術と軸を作る技術がそれなりにできていれば、そのジャンプを跳ぶ技術が全くなくてもできてしまうことです。4回転を跳んだこともないような選手が他の要素に影響のでないようなプログラムの最後に4回転のアクセルを跳んで回転不足で転倒し、それに対してトリプルアクセル以上の得点が出たら、皆さんはどう思いますか? そんなものにそのジャンプを跳んだことを認めるような定義に基づく得点を与える価値があるでしょうか?
もちろん、そのジャンプを跳ぶ技術があるのに、ほんの少しの狂いでこのようなミスをしてしまうこともあります。けれども、だからといってそれに高い得点を与えることは、「4回転が跳べる選手に対しては、4回転を跳ばず3回転を跳んでも4回転を跳んだことにして点を与えるべきだ」と言っているのと何ら変わりないわけです。

とはいえ、曲がりなりにも着氷したジャンプについては、それなりの技術を認めてもいいのにな、という気持ちが私にも正直あります。

一つ言えることは、システムというのは所詮システムだということです。もっと細やかなスケートの価値を評価するためにPCSがありますし、複数のジャッジが存在します。それらが機械的なシステムと補い合うことによって、スポーツとしても芸術としても価値の高いものを評価していくシステムになるということが、COPの狙いだと思っています。

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