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解説

2008年9月 6日 (土)

今季のスパイラルシークエンスの流行はこれ?

クールシュヴェルの大会の映像が、いくつかあがっています。男子はインターネットでフリーの放映がありましたので、その映像が見られますが、女子の映像も撮影していた方がYouTubeにあげてくださっています。
こちらはステファニア・ベルトン選手のショートプログラム。
http://jp.youtube.com/watch?v=seaHS4mCf2A

スパイラルに注目してください。構成上は明らかにレベル4狙いです。
RFI-アラベスク→チェンジエッジ→RFO-キャッチフット→足換え→LBI-ケリガン6秒
これでレベル2以上の要件である「支持なしポジションを含む」(アラベスク)とレベル3以上の要件である「両方のスケーティングフット、進行方向、エッジのポジションを含む」(RFI,RFO,LBI)を満たしています。
さらにレベルを上げる特徴として
・スパイラルポジションのままチェンジエッジし前後3秒ポジションを保つ
・難しいバリエーション(キャッチフット)
・完全なスプリットポジション(ケリガン)
・6秒間のポジションの維持(ケリガン)
の4つを満たそうという狙いだと思います。
しかしこのスパイラルシークエンスは、レベル1にとどまっています。最初のアラベスクからチェンジエッジまでに3秒維持していないためです。これでアラベスクのポジションが認められず、残念ながら最低のレベル1となってしまいました。
また、ケリガンスパイラルも、完全なスプリットと認められるかどうか、微妙なところだと思われます。これはレベルの問題にはならないですが、助走時間もどうしても長くなってしまいますね。
しかし、こういった最後のスプリットや難しいバリエーションのバックスパイラルで6秒というのが、今年のモードになりそうな予感がします。

http://jp.youtube.com/watch?v=cnByJoipyTs
こちらは安藤選手がハッケンサックのショーで披露したショートプログラム。基本は昨シーズンと変わりませんが、最後のI字スパイラルが6秒になっています。
LFO-アラベスク→チェンジエッジ→LFI-キャッチフット→足換え→RBO-I字6秒
I字は安藤選手が最も得意なポジションですから、助走が短くても安定しています。チェンジエッジも今季からは前後で明瞭なカーブを必要としますからかなり思い切って倒していますね。脚の角度を維持したままできるようになればいいのですが、簡単ではないと思います。
これはI字でスプリットの狙える選手にとっては最も現実的な方法になりそうです。

中野選手もショーでショートプログラムを披露していますが、全体を通じて競技用の構成にはなっていませんでしたので、これから変えてくるのではないかと思います。ザ・アイスの演技は昨シーズンまでと同じ構成です。アラベスクの脚のあがりがかなりいいですが、完全なスプリットと認められるかは微妙な感じです。

以前指摘したとおり、6秒を入れなくても4つの特徴をそろえられるのは支持なしの完全スプリットか難しいバリエーションを持つ選手だけ。具体的にはアラベスクで完璧なスプリットができているジャン選手らや、ファンスパイラルで難しいバリエーションを見せた真央選手くらいです(これが実際難しいバリエーションになるかはわかりませんが、テクニカルスペシャリストの岡崎さんは独創的で技術的にも素晴らしいバリエーションだと評しています)。

しかし、ジュニアの選手も果敢に6秒のスパイラルに挑戦しているようですので、案外レベル4はこれからどんどん認定されるかもしれませんね。

2008年7月 5日 (土)

ISU Communication1505

続いて、GOEの加点基準を整理した1505についてです。

今後、以下のGOEを上げる特徴のうち、+1に関しては1~2つ、+2に関しては3~4つ、+3に関しては5~6つを満たさなければならなくなります。
1つ1つの条件を満たしているかどうかはジャッジの裁量次第でしょうが、検証に具体性が出てくるでしょう。

<ジャンプ>
・予期しない、または創造的な、あるいは難しい入り
・要素に直ちに繋がる明瞭なステップ、または自由なスケーティング動作
・変わった空中姿勢、回転をディレイさせる(体を開いてゆったりとジャンプに入り上がりきった時点で軸を締め回転をはじめる)
・高さ、飛距離が優れている
・着氷姿勢が優れて美しい、あるいは創造的である
・入りと出の流れが優れている(コンビネーション、シークエンスではジャンプ間の流れも優れていること)

従来は、6番目が非常に重視されていました。4番目、1番目もかなり配慮はされていますが、2番目に関しては6番目を妨げるようなものはむしろ低い評価を受けていたように思います。
3番目は、キャリエール選手の3-2-2が3-2-2の中では非常に高い評価を受けていたことを考えれば、まずは考慮されていると思います。こうして明文化されることで、かつてのボイタノ、伊藤みどりさんらのようにいろいろな工夫をしてくる選手が出てきたらたのしいですね。
しかし、全てを満たすようなジャンプは本当に難しいと思います。
なお、ディレイジャンプは少ない回転数のジャンプでないと難しいと思うのですが、私が読んだ本ではどうやら、多回転ジャンプの練習を始める前、十分な滞空時間を会得するために練習することのあるジャンプらしいです。フリップなどは、滞空時間が小さいままで、早く回転をはじめようという意識ばかりではうまく多回転が跳べないのだそうです。
トリプルアクセルが出来る選手なら、ダブルアクセルのディレイもいけますかね!?

<ステップシークエンス>
・力強く見栄えがいい
・全体を通してスピード、加速が優れている
・音楽のリズムに合っている
・プログラムの個性を引き立てている
・優れたコントロール、全身を使った正確なステップ
・独創性

1番目を重視しすぎてハデハデなステップになりすぎてしまうのもどうかと思うのですが、あるいは単にくどいのがエネルギッシュというわけでもなく、切れ味鋭いとか、あるいは豊かな流れが損なわれないものもこれに含まれるのかもしれません。
また、従来プログラムコンポーネンツで見られてきたことをGOEの基準に明文化して含めたことは、やはり技術面ばかり気にしてバタバタとしたステップは見たくない、ということを示しているのでしょう。曲想に合わせて、激しさ、さわやかさ、精緻さ、やわらかさなどさまざまな個性のステップを踏めることも、また技術だといえます。

<スパイラル>
・流れがいい、力強く見栄えがいい
・全体を通じてスピードが優れている
・姿勢が美しい
・プログラムの個性を引き立てている
・柔軟性が優れている
・独創性

姿勢の美しさ(直訳では体線のよさ)と柔軟性が違う項目になっているのが面白いのですが、まあびっくり人間的なものと審美的なものとで区別したいという考え方だと思います。体が硬くても、優雅なポジションってのはあると思いますので。
でも正直、体の柔らかい選手はレベルの認定で十分得をしているので、柔らかいだけで加点がつくというふうにしなくてもよかったような気がします。

<スピン>
・入り、回転、足換え、出などの全ての面でよくコントロールされている
・回転スピードや加速が優れている
・足や姿勢による回転数のバランスがとれている
・要求された回転数より明らかに多く回っている
・ポジションが優れている(フライングスピンでは空中姿勢も含む)
・独創性

どの要素にも出てくる「独創性」は、まあ正直加点を高くするか低くするかで迷ったときに、この要素は面白かったので高くしようとか、ありきたりなので低くしようとか、そういう後押しをする程度のものかと思われます。
また、審美的、芸術的な部分と技術的な部分でのバランスをとろうと努力しているのが見受けられますね。どちらが欠けても高い加点は得られないということになります。

一つの観点だけが飛び抜けて、驚くくらいいいという場合の加点について、これでは制限されてしまう、という見方もあると思います。しかし、これらの技術は互いにリンクし合っていて、どれか1つが飛び抜けて優れているということは他の面も実は平均以上に優れているということだったりします。そういうところを、ジャッジにはポジティブに採点してほしいなぁと感じています。

ISU Communication1504

では1504の内容から、特に選手の演技に関わる部分を説明していきたいと思います。意訳バリバリでまいります。

<フリーのプログラムから減らす要素>

・シニア男女 スピンを最大4つから3つに変更
・ジュニア男子 ステップシークエンスを最大2つから1つに変更
・ジュニア女子 スパイラルシークエンスを廃止(ステップシークエンスは最大1つのまま)

単純に、これまでは演技時間に対して、要素の数が多すぎた、ということができるのかもしれません。当初は「やりすぎないよう、制限する数」だったのでしょうが、結局それをいっぱいにやることが勝つための条件になってしまいました。選手に「プログラムの流れを損ねる要素ならやらないという選択肢もあるんですよ」と言ったところで、選手は多分少しでも勝ちやすい道を選択するでしょう(実際には世界選手権の真央選手のように、要素がまるごと一つ抜けても勝てることはありますが)。ならばやはりルールで減らしてやるしかない。
その中で、どうしてその要素が減らされたのかという意味を考えてみるのもおもしろいです。
以前テクニカルスペシャリストの岡崎さんが「スパイラルを要素ではなくトランジション、MIFとしてとらえた方が、バラエティに富んだものが出てきていいのではないかという話が出ている」ということをおっしゃっていたのですが、ジュニア女子に関してはまさにそのような動きだと考えられます。
しかし、SPからなくなったわけではありませんから、スパイラルの基礎ができなくてもよくなるというものではありません。基礎はおさえながらも、もっと音楽性に富んだ、プログラムにマッチしたスパイラルを研究してほしい、ということなのではないかと思われます。
男子のステップに関しても、要素としてのステップではなく、MIFとしてのステップ、プログラムの流れにマッチしたステップを研究してほしい、ということでしょうか。

シニアに関しては、多分そういう成長を促すものというよりは「またこのスピンか」とジャッジが心底うんざりしていたんではないかと、私は勝手に考えています。「似たようなスピンを連発するくらいなら、やらなくてよろしい」と。
ちょっと前に購入した外国の本に、「キャメルスピンは芸術的な要求、シットスピンは技術的な要求で実施され、発展してきたスピン」といった記述がありました。これはまだコンパルソリーフィギュアのあった時代に書かれた本でしたので、新採点のことはいっさい関知していないわけですが、TESを稼ごうとすれば技術的な要求に応えるスピンにどんどん偏ってしまう、ということの裏付けのように思えました。
とはいえ、数が減るからスピンの得意な人が不利になる、という単純なものでもないと考えます。得意な人は、ひとつひとつのスピンの独創性や技術の上限を高めていけばいいのです。演技時間が増えるのですから、8回転のレベル要件を含むスピンだって今よりたくさん見られるようになるかもしれません。そういうイノベーションを期待しています。

<ジュニア男子のSPトリプルアクセル解禁>

女子と同じく、男子のジュニアではSPのアクセルはダブルアクセルに限定されており、トリプルアクセルを跳ぶには、トリプルからのコンビネーションジャンプのファーストジャンプとして跳ぶしかありませんでした。(ただし女子シニアでは、ステップからのジャンプとして跳んでもかまわない)
単独のトリプルアクセルなら問題なく跳べても、コンビネーションとなると安定せず勝てない、にもかかわらずSPからトリプルアクセルのコンビネーションに挑戦してくるジュニア選手は、実は少なくありません。
彼らはもちろん、シニアに上がることを見据えてそうしているものと思われますが、実際には、彼らは現在の多くのシニアよりも難しいことをSPでしています。もちろん、ダブルアクセルは彼らにとっては簡単なジャンプですが、ステップからのジャンプは種類を選べませんし、全体として決して易しくはありません。その技術と度量が「これはジュニアの大会だし」ということで認められないのであれば、ちょっと悲しいことです。
女子ジュニアの3-3解禁も同じような流れではありますが、この場合は、現により難しいことをしている選手が演技をまとめやすくする手助けといえます。挑戦するだけでなく、演技をまとめることも大切なことですが、挑戦で培った技術をまとめることで捨ててしまうのはもったいない、ということですかね。

<アクセルを含むジャンプシークエンス>

ジャンプの着氷からステップ、ターン、ホップやマズルカ、採点表にないジャンプなどをはさまず、直ちにアクセルジャンプを跳んだ場合、全体をジャンプシークエンスと見なす

これは、アクセルジャンプですからRBOからLFOにというアプローチ自体の踏み替えはOKということでしょうね。確かに、ホップをはさむとかえって間延びしちゃう面はありました。これでジャンプシークエンスを導入してくる選手が増えるでしょうか?

<競技の速やかな進行などに関わるルール変更>

・選手達は名前をコールされてから1分以内に演技をはじめなければならない。そうしなかった場合、棄権と見なす。
・負傷や用具などの問題で演技を中断し再開する場合、3分以内に再開しなければならない。かつ、2点の減点が科される
・本人に責任のない中断(運営、会場側に責任のある事故や、観客による演技の妨害など)では、減点は科されない。
・グループの最初に演技する選手は、6分間練習中に負傷などで処置の必要が出た場合、名前をコールするまでに最大3分の猶予が与えられる。

選手権フリーの人数を20人にされるのは寂しいので、選手には少し厳しいルールかもしれませんが、速やかな進行に協力してほしいです。もちろん、観客も、選手の集中を妨げたりしないよう、配慮しなくてはなりません。
また実際、中断のあったプログラムは印象がぼやけてしまい、新採点ですから他の要素で挽回して高得点が出ることもありますが、納得のいかない気分になってしまう場合もあります。

<不正エッジ判定の変更>

・テクニカルパネルは明らかな不正エッジ踏み切りには"e"をつけ、ジャッジはGOEをマイナスの範囲にとどめなければならない。
テクニカルパネルは非常に時間の短い、あるいは不明瞭な不正エッジの踏み切りには"!"をつけ、ジャッジはこの判定を考慮に入れてGOEをつける

数学でしょっちゅう見てたりしないと"!"というマークのインパクトが強すぎて違和感があるかもしれませんが(笑)
現状のルールでは、ほんのわずかのコーラーのさじ加減が2~3点も得点を左右してしまうこともあります。微妙なエッジのジャンプについて、不正エッジがコールされればマイナス、コールされなければ+1以上というような、極端な結果になりがちです。これこそが、ファンにしろ関係者にしろ最も気をもんでいた点だったと思います。
そこで"!"が登場。本当なら、コールされなくてもエッジが微妙だと思えば、ジャッジの判断で減点してもよかったと思うのですが、やはりこちらもルールの方で誘導してやらなくては積極的にはしづらかったのでしょう。このマークがついたジャンプに関しては、マイナスにはしなくても、採点の考慮に入れるように、ということです。
これで不正エッジが絡んだ得点の現状とのギャップをすこしでも小さくできるといいのですが。

<1494の補足・訂正>

・(補足)スピンのレベルを上げる特徴、「2つめの難しいバリエーション」は
 「足換えのない単一姿勢のスピンは最初と異なるバリエーション」
 「それ以外のスピンは最初と異なる軸足か基本姿勢で行ったもの」
・(補足)スパイラルシークエンスのレベルを上げる特徴、「6秒間姿勢を保持」は
ポジション、バリエーションの変更をせずに6秒ということである。
・(再定義)シットスピンの定義は、「お尻の下端が膝の上端より高くなく、脚の膝上部分が水平になっているもの」となった。
・(補足)ステップシークエンスの要求されるターン、ステップは片足で行われなければならないが、これは両足で行ったものは無視されるということである(実施すること自体は禁じない)。
・(訂正)ダブルアクセルのGOE減点幅は「-0.8,-1.6,-2.5

1、2番目と最後のものは単なる言葉が足りなかったとか間違っていたということで、まあそういう意味だろうなと推察してあったことです。
3番目は、昨シーズン高橋選手がしていたようなお尻を落として膝を立てたバリエーションを認めないということでしょうか。あのポジション、シットでフォアスピンをするには有用なポジションだったと思うのですが。まあ、キャメルやアプライトも活用してください、ということで。
4番目は、チェンジエッジやトウステップ、両足をついた状態でのスリーターンなどが想像しやすいですね。また、足を換えるステップで両足をついた時間がはっきり認識できるほどだと、それも問題ありなのかもしれません。

 
とりあえず、1504の内容はこんなところで。他にもISUのロゴの規定だとか、国際ジャッジの資格取得に関する規定だとかいろいろあるのですが、まあ演技には直接関係ないかな、ということで、無視しました。興味のある方は、JSFに和訳が載った際にでもチェックしてみてください。

ISU Communication1504-1505 導入編

正式発表待ち、と言ったそばから新年度になってさくっと出ました。
6月の総会で決議されたぶんのルール変更です。
ペアの方がいろんな変更がある感じですが、やはりシングルに絞って解説です。
ペアの方ももっと勉強することで視野が広がる気がするのですが、最近やっとリフトのグループをすぐにわかるようになってきた、というていたらくでして…。ツイストの入り方なんかちんぷんかんぷんです。

ともかく、1504の内容は、先のエントリーで言ったとおり
それぞれのカテゴリーでフリーの要素を減らす、ということが最大の変更。
また、ジュニアの男子SPでアクセルジャンプとしてのトリプルアクセルを解禁すること
さらに、不正エッジに関して、明らかなものに"e"をつけるだけでなく不明瞭なものに"!"をつけること
これらが主な新しい決議です。
他にも、アクセルを含むジャンプシークエンスの定義の変更、速やかな競技進行のためのルール変更、1494の内容についての補足訂正がいくつかあります。
また、少々興味深いものとしては、国内選手権大会で一定規模を越えるものは、国際資格を持つレフェリー、テクニカルコントローラーが参加し、大会後ISUにレポートを提出することが求められています。
ロシアのようにスケート大国で、国内大会に独自ルールを盛り込んだ場合、きちんとそれが周知され正しく運用されたかどうか、不明瞭になってしまう場合もありますから、こういうことも必要なのかもしれませんね。

1505の決議は、要素のGOEのプラス面での基準を明瞭化するものです。
ジャンプなどのプラス評価は論争になりやすい部分ですからね。今後は、何を満たしていると見なされたかという点で、レベル判定のように我々素人にも検証が可能になります。ジャッジの裁量を信じていないような、そんな申し訳ない気持ちもありますが、我々が感情的にならず冷静に語り合えるようになるという意味では、ありがたいものです。

内容の解説については、次のエントリーに記します。

2008年5月 4日 (日)

ISU Communication1494 その3

ルール変更、最後に要素のレベル基準の変更点について。

◆ステップ
・ターン、ステップの種類について、レベル2では簡単な多様さ、レベル3では多様さ、レベル4では複雑さを満たしている。
(旧・ターン、ステップの種類について、レベル2、3では多様さ、レベル4では複雑さを満たしている)
・ロッカー、カウンター、ツイズル、すばやいステップを組み合わせ、逆方向の回転のものを直ちに続けて行っている。
(旧・ロッカー、カウンターやツイズル、すばやいトウステップを組み合わせ、逆方向の回転のものをすばやく続けて行っている)

◆スパイラル
3つのポジションを異なる足、進行方向、エッジで行うことはレベル3以上の必須要項である
(かつてはレベルが1つ上がる特徴であったが、今後はレベルが上がる特徴としては数えず、しかしこれを満たさなければレベル3以上にはならない最低条件となった)
6秒間同じ姿勢を保つ
(上の、なくなったレベルを上げる特徴に代わり、新たに加わった項目)

◆スピン
(これまでは単一姿勢のスピン、フライングスピン、足換えスピン、コンビネーションスピンなどと、スピンの種類ごとに異なる項目でレベルの認定基準が決まっていたが、今後は統一される。その中で)
2つめの難しい変形
 →足換えなしの単一姿勢スピンでは、最初と異なるもの
 →それ以外のものは、最初と異なる基本姿勢(コンビネーション)、異なる足(足換え)で行ったもの
(これまで、足換えなしのコンビネーションスピンの難しい変形は基本姿勢ごとに認められていたが、今後は3つの基本姿勢を入れていても中間姿勢を含め2つの難しい変形しか認められなくなった)
・同じポジションにおいて両方のエッジでのスピン(あらゆるスピンで1回だけ認める
(これまでは、足換えスピンではそれぞれの足で1回ずつ認められていた)
・姿勢やエッジを変えずに8回転(キャメル、シット、レイバック、アプライトの難しい変形で)(足換えスピンではそれぞれの足で1回ずつ、計2回まで認める
(これまでは、全てのスピンで1回だけ認められていた)

<注釈>

◇ステップ
ステップの種類:トウステップ、シャッセ、モホーク、チョクトー、チェンジエッジ、クロスロール
ランニングステップがなくなった
簡単な多様さ:6つ以上のターンと4つ以上のステップを含む。ただし同じ種類のステップは2回までしか数えない
多様さ:8つ以上のターンと4つ以上のステップを含む。ただし同じ種類のステップは2回までしか数えない
(旧/多様さ:4種以上の異なるターンと2種以上の異なるステップをそれぞれ2回以上含む)
(多様さに関して、種類の最低数としては新旧同じだが、新しいルールでは種類を増やせば、1種類あたりの回数を1つにできるものも増えるので、選択肢が増した。たとえば旧ルールではスリー、ブラケット、カウンターをそれぞれ2回、ロッカーとツイズルを1回ずつではターンの多様さは認められなかったが、新しいルールでは全てで8回のターンを行っているので多様さが認められる。簡単な多様さではさらにハードルは低くなっている)

◇スパイラル
チェンジエッジには変更の前後のポジションで最低3秒ずつの保持が要求される。また、チェンジエッジは1メートルの間に行われなければならない

◇スピン
3つの基本ポジション:キャメル(フリーレッグの膝下を後方に腰より高く上げたもの。しかし、レイバック、ビールマン、同じような変形はアプライトとみなされる)、シット(お尻の下を軸足の膝の上部より低くするもの)、アプライト(軸足の膝が伸びているかほとんど伸びていて、キャメルポジションではないもの)、中間姿勢(これら3つの基本姿勢にあてはまらないもの)
フライングスピン:ステップオーバー(フライングの着氷の際バランスを乱してフリーフットに完全に乗ってしまうようなミス)の場合、ショートプログラムではレベルは1を越えない。フリーでは、この入り(難しい空中姿勢や、踏み切りと同じ足での着氷)がレベル上げの特徴と認められない
 

簡単に振り返って参りましたが、まず、ステップでは種類の規定はレベル2、3で易化しました。回数をそんなに頑張らなくても、組み合わせ方や体の動き、正確さで頑張ればきちんとレベル2がとれますよ、という感じです。さすがに誰も彼も下手な鉄砲状態で長々とステップを踏む傾向に「何か違う」と感じる関係者が増えたということでしょうか。
もう一つ、逆方向の回転を組み合わせる規定ですが、これは正直私はいまだ旧の基準もきちんと飲み込めていません。変更点の部分については、スリーとブラケットやオープンチョクトーとクローズチョクトーを連続で行っても認定はされないでしょうから、やはり速いfull body rotationを伴うステップに限定してのものか、と思われます。可能性としては旧来の回転するトウステップに加えダブルスリーターンやループなどでしょうか。

スパイラルに関しては、難化といえます。
これまでは足、方向、エッジのバラエティをそろえることはレベル上げの最も一般的な特徴でしたが、これがなくなることによって、今まで難しい変形を1回、チェンジエッジ、スプリットポジション(あるいは2度目の難しい変形)でとれていたレベル4にもう一つ何かを加えなければならなくなります。
しかし、難しい変形を2回とした場合、それがどちらも手で支持した姿勢なら、もう一回は必ず支持なしの姿勢を入れなければなりません(3つのポジションが全て支持ありの場合、レベルは1になってしまう!)。ですからこれが可能なのは、支持なしでのスプリットポジションや支持なしでの難しい変形が可能な、とりわけ体の柔らかい選手だけです。
ところが、既存のもう一つの特徴、支持なしでフリーレッグのポジションや進行方向を変える、というものは、チェンジエッジと同時には成立しません。(3つのポジションをつなぐ2度のつなぎのうち最低1回は足換えでなければならないので(足を換えないとレベル2以下になってしまうから)、残り1回、どちらかを選んで行うことになる)
そこで登場するのが、6秒間の保持です。これであれば、完全なスプリットのできない選手でも通常のアラベスクポジションで十分レベルを上げることができます。しかしそんなに易しいことではありません。通常のアラベスクポジションは、ほとんどの場合その前後にチェンジエッジを行います。十分にスピードを保持し、すばやくチェンジエッジを行って前後で合計9秒以上スパイラルを行うには、それなりにスケーティングの技術を要します。
あるいは足を換えた後のバックスパイラルで6秒のキープをするとか、バックでチェンジエッジして足を換えてからフォアで6秒のキープをするとか、難しさを分散することもできるでしょう。どちらにしても、全体に負担は増えます。
これまで個性的なシークエンス構成に果敢に挑戦したり、プログラムごとに違うことに挑戦していた選手達であれば、対応も早いでしょうが、毎年レベル4テンプレートを作ってそれだけをしてきた選手ですと、やはりこの夏猛練習が必要かもしれません…。

スピンでは、高い頻度で行われていた変形、チェンジエッジに制限が加わることで、他のレベル上げの特徴ももっと積極的に活用して個性的なスピンにするように、という意図があるように感じられます。
3つの基本ポジションというのがあるコンビネーションではさほど変化はなさそうですが、単一姿勢のレベル4も得点が少し上がったことで、いろいろなことに挑戦しがいが出てきていると思います。個性的なスピンが少しでも増えるといいですね。

これで今回のルール変更に関する解説は終わりです。何か質問、ご感想がありましたら、私もわからないことは多々ありますけれど、コメント欄にお気軽にどうぞ。

ISU Communication1494 その2

今回のルール変更について、続いてはミスに対するGOE減点のガイドラインを見ていってみましょう。

◆単独ジャンプ
・SPにおいて、要求される回転数より少ない(回転不足によるダウングレードは含まない) GOE-3
・1/4以内の回転不足 -2 →  -1~-2
質の悪い踏み切り -1~-2

◆コンビネーションジャンプ、ジャンプシークエンス
・SPにおいて、要求される回転数より少ない(回転不足によるダウングレードは含まない) GOE-3
両方のジャンプがダウングレード -1~-3,-GOE → -3,-GOE
一方のジャンプがダウングレード -1~-3,-GOE → -1~-2,-GOE

◆スピン、コンビネーションスピン
・質の悪い足換え(たとえばシットスピンの足換えで中間姿勢になってしまうようなもの) -1~-3

◆ステップ、スパイラル
パターン全体の半分未満しかステップ、スパイラルをしていない -1~-3

いかがでしょう。実はちょっと私自身、意味がよくわからない箇所があります。
というのは、「質の悪い踏み切りって?」ということ。不正エッジ、両足踏み切りに関する減点は依然として存在します。となれば、踏み切りのタイミングより回転開始のタイミングの方が早い、あるいは踏み切りをしてからブレードが完全に離氷するまでにかなり回転が進んでいるようなタイプのジャンプのことを指しているのだろうか、と思うのですが。この点はちょっと謎です。

他にちょっと慣れない項目は、ステップ、スパイラルの減点の部分でしょうか。シークエンスと言うにはちょっと間延びしてスカスカであることを、パターンの長さで測るという基準を持ち出した点です。
昨シーズンまではこれを時間の長さで測っていましたが、減速したステップなどを長々と続けるよりは同じ距離を猛スピードで駆け抜けてもらった方が、ずっと見栄えはいいものです。
たとえばリンクの端から端までスパイラルで10秒かかる人と5秒かかる人がいたとしたら、後者の人の方が技術は高いといえます。しかし、そこで足を変えてポジションを変えるのにかけられる時間が、前者は10秒とたっぷり、後者は5秒と余裕がないのでは、後者の方が損をしてしまうことになります。ですからスパイラルをしていた時間ではなく、その距離を引き合いに出したと思われます。

ダウングレードについて、コンビネーションでは一方のジャンプのダウングレードと両方のジャンプのダウングレードの項目を分割しました。
これはたとえば3F<+2Tよりも3F<+3T<の方が、他の観点を除けば低い得点になる、ということです。回転不足の程度にもよりますが、1つのジャンプのみのダウングレードに対する減点は現在よりも軽減された、という見方もできますが、2つダウングレードなら程度にかかわらず転倒のような大きなミスと同程度の減点をすべき、というのはなかなか厳しい見解だなぁと私は思いました。

ここからは少し本題から逸れます。
しかしダウングレードというのは、ありがちな、傍目には目立たないミスではありますが、「そもそもそのジャンプとして成立していない」、ジャンプの定義そのものに反するミスではあるのです。エッジのサイドを使わずまっすぐのスパイラルをしても、レベルをとられないのと同じようなものです。
ですから甚だしい回転不足のジャンプを「そのジャンプを跳んだ」ものとして容認するという考え方自体が、スケートの正しい技術を否定している、という冷たい見方をすることもできます。
とりわけ、回転不足での転倒。回転不足の転倒は、踏み切る技術と軸を作る技術がそれなりにできていれば、そのジャンプを跳ぶ技術が全くなくてもできてしまうことです。4回転を跳んだこともないような選手が他の要素に影響のでないようなプログラムの最後に4回転のアクセルを跳んで回転不足で転倒し、それに対してトリプルアクセル以上の得点が出たら、皆さんはどう思いますか? そんなものにそのジャンプを跳んだことを認めるような定義に基づく得点を与える価値があるでしょうか?
もちろん、そのジャンプを跳ぶ技術があるのに、ほんの少しの狂いでこのようなミスをしてしまうこともあります。けれども、だからといってそれに高い得点を与えることは、「4回転が跳べる選手に対しては、4回転を跳ばず3回転を跳んでも4回転を跳んだことにして点を与えるべきだ」と言っているのと何ら変わりないわけです。

とはいえ、曲がりなりにも着氷したジャンプについては、それなりの技術を認めてもいいのにな、という気持ちが私にも正直あります。

一つ言えることは、システムというのは所詮システムだということです。もっと細やかなスケートの価値を評価するためにPCSがありますし、複数のジャッジが存在します。それらが機械的なシステムと補い合うことによって、スポーツとしても芸術としても価値の高いものを評価していくシステムになるということが、COPの狙いだと思っています。

2008年4月30日 (水)

ISU Communication1494

来季からのルール変更が発表されました。

主な変更点は、要素の基礎点の大幅な変更、レベル認定の条件に関するいくつかの変更、そしてミスに対するGOE減点の目安の一部変更、となっています。

まずはわかりやすいところで基礎点の変更から解説していきます。

赤は(絶対値の)高くなった要素、青は低くなった要素です。

◆ジャンプ
3A BV 8.2 マイナスGOE -4.2まで
4T BV 9.8 マイナスGOE -4.8まで
4S BV 10.3 マイナスGOE -4.8まで
 ~以下4LzまでBVは0.5刻み~
4A BV 13.3 マイナスGOE -4.8まで

◆スピン
USp Lv1 1.2 Lv2 1.5 Lv3 1.9 Lv4 2.4
SSp Lv1 1.3 Lv2 1.6 Lv3 2.1 Lv4 2.5
CSp Lv1 1.4 Lv2 1.8 Lv3 2.3 Lv4 2.6
LSp Lv1 1.5 Lv2 1.9 Lv3 2.4 Lv4 2.7
FUSp Lv1 1.7 Lv2 2.0 Lv3 2.4 Lv4 2.9
FSSp Lv1 2.0 Lv2 2.3 Lv3 2.6 Lv4 3.0
FCSp Lv1 1.9 Lv2 2.3 Lv3 2.8 Lv4 3.2
FLSp Lv1 2.0 Lv2 2.4 Lv3 2.9 Lv4 3.2
CUSp Lv1 1.7 Lv2 2.0 Lv3 2.4 Lv4 2.9
CSSp Lv1 1.9 Lv2 2.3 Lv3 2.6 Lv4 3.0
CCSp Lv1 2.0 Lv2 2.3 Lv3 2.8 Lv4 3.2
CLSp Lv1 2.0 Lv2 2.4 Lv3 2.9 Lv4 3.2
CoSp Lv1 1.7 Lv2 2.0 Lv3 2.5 Lv4 3.0

◆ステップ
SlSt,CiSt,SeSt Lv1 1.8 Lv2 2.3 Lv3 3.3 Lv4 3.9


いかがでしょうか。
全体に基礎点が上がっていますから、レベル要件の変更に左右されない基礎技術の高い選手の場合、来季のTESは従来よりさらに高めになっていくことが予想されます。
私は素人なうえ未熟者なファンなので、レベルの要件の変更がどのような影響をもたらすか、正確に予想することはまだ難しい段階です。とりあえず、レベル要件の変更は後においておいて、基礎点の変更がもたらす影響について考えてみたいと思います。

高難度ジャンプの基礎点が上がった点ですが、これは同時にマイナスGOEの幅が大きくなっている点に注目しなければなりません。実は、転倒など大きなミスのペナルティは従来よりも大きくなっているのです。
仮に従来の転倒ジャンプの得点(ディダクションのマイナス1点を加味した点)と新しい得点表での得点を比べてみましょう。

3T 0.0
3S 0.5
3Lo 1.0
3F 1.5
3Lz 2.0
3A 3.5→3.0
4T 5.0→4.0
4S 5.5→4.5

このように、トリプルアクセルでは0.5点、4回転では1.0点得点が低くなっていることがわかります。
「高難度ジャンプはよりハイリスク、ハイリターンになった」ということができると思います。
なぜ失敗時のペナルティを大きくする必要があったのでしょう。
実はトリノオリンピックのときのバトル選手の演技にヒントがあります。バトル選手はこの試合で見事銅メダルを獲得していますが、フリーで4回転に挑戦してきています。4回転は試合で1度しか決めたことのない彼が、なぜこの大事な試合で4回転に挑んだのかということについて、かつてのカナダの偉大なチャンピオン、カート・ブラウニングはこういっています。
「4回転は転倒しても5点とれる。クリーンなダブルアクセルを跳ぶよりも高得点だ」
…現実的には、4回転を転倒すれば大変な体力を消耗します。5点は手に入っても、後半の要素でガタガタになる可能性があります。今回の世界選手権ではバトル選手がその戦略をとらなかったことも、それを物語っています。ですから日頃から4回転を入れてプログラムを何度も通して練習してきていなければ、こういった戦略は成り立ち得ません。安易に得点を獲る方法とはいえず、結果論として失敗してしまうことの方が断然多いと思われるのですが、やはり「クリーンでないものにクリーンなものよりも得点を与えてしまうのはどうなのか」という気持ちになる関係者も多かったのでしょう。跳べてはじめて、高難度ジャンプは意味を持つべきだ、という考え方です。
4回転は挑戦すること自体が難しい、という考え方の関係者であっても、4回転そのものの価値をより高めるために、やはりこの点は譲歩せざるを得なかったのでしょうね。
一方、クリーンなプログラムや全体の完成度を評価したいと考える関係者も、4回転を跳んでクリーンにまとめたショートプログラムであってもトリプルアクセルまでのショートプログラムに簡単に負けてしまいがちなことを指摘されては、やはり基礎点を上げる点については譲歩せざるを得なかったのではないかと思います。

といって、この変更がフリーの勝負をひっくり返すほどの影響力を持つことはなさそうだ、というのが私の考えです。0.8というのは、ちょっと着氷がシェイキーになっただけで簡単に失ってしまう得点です。やはり、高難度ジャンプよりも全体をクリーンに、ということの方がまだ重視されていると考えます。しかし、高難度ジャンプを跳んでクリーンにまとめる力を持った選手には、小さな上昇ですが、励みになるかもしれませんね。

スピンに関しては、以前GPシリーズの統計をとってもわかったとおり、キャメルスピンを実施する選手が少ないということで、得点が一律だった3つの基本姿勢の中で得点に差異がつきました。
とりわけ、キャメルスピンはレベル3が軒並み大幅に上がっており、高い技術を含んだスピンでレベルを取りこぼすリスクを軽減しています。レベル3でも十分難度が高いとされたわけです。
ただし低いレベルではそのようなことはあまり考慮されていないようです。とりわけフライングキャメルスピンのレベル1はフライングシットスピンのレベル1よりも基礎点が低くなっています。これは、もっとも基本的なフライングスピンがフライングキャメルスピンであるためだと思われます。シット系のフライングスピンは、フライングシットをとっても、アクセルシットをとっても、デスドロップをとっても、通常のフライングキャメルより複雑な入りをしているわけです。
全体的に、単一姿勢のスピンとコンビネーションスピンの差が詰まりましたが、コンビネーション過多な印象のある現状を考えると、よりバランスがとれたプログラムが可能になるのではないかと思われます。

高レベルステップの基礎点上昇については、ジャンプ、スピンと基礎点が上昇したことに呼応して、やはりスケーティングやコンパルソリーの要素を含むステップも「力の差がつく」要素にしなくてはいけない、ということなのではないかと思われます。
これまではスパイラルシークエンスと同じ基礎点になっていましたが、現実的に、スパイラルのレベル4ならジュニア選手でも軒並み獲れるのに、ステップのレベル4は4回転よりもレアなくらいです。この基礎点が変わってくるのは実力差をより反映することになるのではないか、と、素人ながら想像します。


とりあえず、基礎点に関する解説はこんなところ。
レベルの要件、ミスのマイナスGOEについては、これから暇を見て説明したいと思います。

2008年3月23日 (日)

ザヤックルールとコンビネーション回数制限・後編

さて、今回の世界選手権で一部の選手を苦しめたコンビネーション回数制限に関する解説です。

実は昨年の世界選手権でも同じルールで痛いミスをした選手がいました。
そう、織田信成選手です。

しかし、織田選手と今年の3選手との違いは、織田選手はザヤックルールは絡んでおらず、今年の3選手はザヤックルールが絡んでいたことです。

そもそもコンビネーション回数制限のルールとはシンプルなルールです。

1) フリースケーティングでのコンビネーションジャンプ、ジャンプシークエンスは合わせて3度まで。4度目のコンビネーション、シークエンスは種類を問わずまるごと無効になる。

2) 3連続のコンビネーションジャンプは1度まで。2度目の3連続コンビネーションジャンプはまるごと無効になる。

2番目に違反してしまった選手は、多分いないのではないかと思います。非常にわかりやすいし混乱することもまずないからです。
1番目の方がやや厄介といえます。

まず先に、ザヤックルールと関係のない織田選手のジャンプ構成をあげてみましょう。

1 3A+3T+3Lo
2 2A
3 3S+2T
4 2A+3T
5 3Lz*+2T* (無効要素)

6 3F
7 3Lz
8 2A

織田選手は4度目のジャンプに単独のトリプルアクセルを予定していました。が、跳べなかったためとっさに2A+3Tのコンビネーションにしたのです。そして、その次のジャンプもコンビネーションにしてしまった。これがいけなかった。完璧な数え間違いです。
では、ルッツをコンビネーションにしなければよかったのでしょうか? 実はそうではありません。なぜならルッツを2度跳んでいるから、1度はコンビネーションにしなくてはいけなかったのです。つまりあくまで余分だったのは2A+3T。単独のダブルアクセルでここは我慢すべきだったのです。

一方で、今回の高橋選手の失敗は少々気の毒なものでした。ザヤックルールで余分なシークエンスが2つも入ってしまっていたのです。

1 4T
2 4T<+SEQ
3 3A
4 3A+SEQ
5 3F+3T
6 3S
7 3Lo
8 3Lz*+2T* (無効要素)

チャン選手、キャリエール選手が同様の失敗をしていたのがあって、最後にセカンドを跳ぶな跳ぶなと念じながら見ていたのですが、それはフジテレビの解説の本田さん、Jスポーツの解説の田村さんも同様だったようです。お二人が指摘しているので私が言うことは何もないのですが、言えることがあるとすれば、先のエントリーでも述べましたが、構成上リカバーの手だては何もなかったので、何もしないのが一番の対策だったということです。

一方で、実は織田選手の失敗では他の手だてがありました。
彼はトリプルアクセルを2度跳ぼうとして1度しか跳べませんでした。ここがポイントです。トリプルアクセルを跳んで転んだのではなく、ダブルアクセルをきれいに決めていました。つまり、ザヤックルールで認められている2度の同一ジャンプの枠を使い切っていない状態だったのです。
ですからダブルになったアクセルは単独のまま、ルッツのコンビネーションはそのままで、最後のダブルアクセルをトリプルループにするとか、それが難しければ3Lz+2Tを3Lz+3Tにしてしまうことも可能だったのです。
しかしこんなことはたらればに過ぎませんね。全ての可能性をその場で判断するのは、特に極限状態で滑っているスケーターには無理なことです。できるだけ失敗のフォローはシンプルに、最もありそうな3通りくらいの失敗だけを想定し、普段からそれだけをシミュレーションして、それ以外のことはしないようにする、これが確実だと思います。

どちらかの個人ブログで、オリンピックの荒川静香さんの偉かったことを「失敗を取り戻そうとして余計に難しいことをするより、練習通りの構成をクリーンにする方を選ぶことができた冷静さ」だったとおっしゃっていたのを見かけたのですが、まさしくその通りだと思います。

とっさの判断というのは、ときには成功することもありますが、あまりアテにしないほうがいいものであったりします。

ザヤックルールとコンビネーション回数制限・前編

世界選手権、全てのメダリストが決定しました。泣いた選手も、笑った選手も、全ての選手達に、御苦労様と言いたいです。1年間私も涙あり笑いありのシーズンを過ごさせてもらいました。
エキシビションに出る選手達は、是非是非最後にはっちゃけていただきたいですね!

レビューを何か書こうと思ったのですが、演技を見返しているといろんな思いが交錯してなかなか言葉にできません。

でも、以前から書こう書こうと思っていて機会を失っていたことをこの機に書いておきたいと思います。基本的なルールのお話。結構、この検索ワードでこちらにいらしている方もいるようなので。
やっぱり私は演技そのものに何かを言うよりルールや一般論から入って実例を挙げていく方が饒舌になるようです…

俗にザヤックルールと呼ばれているルールは、「フリースケーティングにおける同じ種類のジャンプの回数制限」に関する3つの基本的な約束事のこと。ファーストエイドの文章では2文くらいでまとめられていたと思いますが、実際的な違反や抵触ということに注目すると3つの約束と覚えておくとわかりやすいのです。
で、その3つの約束事とは以下のもの。

1) 3回転以上の同じジャンプ(※種類と回転数がまったく同じジャンプ)3回以上跳んではいけない。3度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

2) 3回転以上のジャンプで3種類以上同じジャンプを複数回跳んではいけない。3種類目の2度目以降のジャンプは(コンビネーションであればまるごと)無効になる。

3) 3回転以上の同じジャンプを2度跳ぶときは、少なくとも1度はコンビネーションジャンプかジャンプシークエンスにする。どちらも単独で実施された場合、後に実施したものをセカンドジャンプ不明のジャンプシークエンスとして扱い、コンビネーション、シークエンスとして数えることにする。

1つめの約束事に違反してしまった選手は、GPシリーズにいました。スケートアメリカのルータイ選手です。
ジャンプ構成をあげてみましょう。

1 3A
2 3T+3T
3 3A+2T
4 3Lz*+3T* (無効要素)
5 3Lo
6 2F
7 3S
8 2A

ルータイ選手は4回転のコンビネーションを跳ぼうとして、回転が抜けて3回転になってしまったようです。そのフォローを適切にすることができず、次の3-3の全てが無効要素になってしまいました。本当にこのミスは痛い。4回転が跳べなかったから、せめて3回転をたくさん跳んで…と考えると、かえってドツボにはまってしまうのです。
4回転がらみのこういったミスはありがちなもので、GPファイナルの高橋選手はこの違反をおそれてセカンドトリプルを跳べなくなってしまったということがありました。実際には次に単独の4回転を跳んだのでセカンドトリプルを跳んでも大丈夫だったし、跳んでおけば優勝できたのですが…こういう微妙なところで勝負が決まってしまうリスクが、4回転にはあります。

2つめの約束事に違反した選手は世界選手権の男子にいました。アントン・コヴァレフスキー選手です。
こちらもジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 3F+3T+2Lo
2 2A
3 3Lz+3T
4 3Lo
5 3Lz
6 3F* (無効要素)
7 3S
8 2A

6番目のフリップは3種類目の複数回ジャンプです。最初を3-3-2ではなく3-2-2にすればよかったのですが…できるだけたくさんジャンプを跳びたいと思うからしてしまう新採点システムの罠ですね。セカンドトリプルに自信があるけれど、単独の高難度ジャンプの跳べない選手がこのような失敗を犯してしまいがちです。

最初の違反も次の違反も、コンビネーションのセカンドジャンプが絡んでいますが、実際にこういうパターンが非常に多く、ファーストジャンプだけでのザヤックルール関係のミスはとても稀です。
おまけに3つめの約束事が非常にコンビネーションに関わりが深いため、よくコンビネーションの回数制限違反とザヤックルールは混同されがちになります。けれど理屈の上ではコンビネーション回数制限とザヤックルールは異なるものです。3つめは「抵触」するだけで「違反」して何かが無効になることはない約束事、と私は覚えています。

ここでは区別をつけるために、3つめの約束事だけに抵触し、コンビネーションの回数制限には違反しなかった例として、日米対抗の高橋選手のジャンプ構成をあげてみたいと思います。

1 4T
2 4T+SEQ
3 3A
4 3A+SEQ
5 3F
6 3S
7 3Lz
8 2A

このとき高橋選手はまったくコンビネーションジャンプを跳べませんでしたが、ルール上ジャンプシークエンスを2回行っているという扱いになります。ジャンプシークエンスは基礎点が0.8倍になってしまうので、コンビネーションにできないというのはかなり大きな失敗になってしまいます。
ランビエール選手などはジャンプが乱れても意地でセカンドジャンプをつけてきていますが、そういうことができるならしておくことは、実は基礎点の上で大切なことです。
私の記憶に残っている素晴らしいリカバリーは、06年エリックボンパール杯の安藤選手の演技です。

1 3Lz
2 3S
3 3F
4 3Lz+2Lo
5 3T+2Lo+2Lo
6 3F+2Lo
7 2A

最初に跳ぶのが3Lz+3Loのコンビネーションのはずでしたが、ファーストジャンプで転倒してしまいました。けれども安藤選手は、後半の2度目のルッツをコンビネーションにしてきました。これは2度目のルッツだからこそ意味のあるリカバーであり、他のジャンプにつけたのでは無意味どころか逆効果でした。2度目のルッツはセカンドをつけようがつけまいが、コンビネーション、シークエンス扱いになってしまい、コンビネーション3つの枠を1つ埋めてしまうからです。
2度の同じジャンプの片方を含むコンビネーションでの失敗は、成功しようが失敗しようが絶対にコンビネーション枠を1つ使ってしまうこと、1つの基礎点が0.8倍になってしまうことの両面で痛いのです。ただ単に、セカンドジャンプの得点を失うというだけの話ではない。ザヤックルールの3つの約束事の中で、実は最もわかりにくく、それだけに損をしやすいのがこのルールなのです。
もし安藤選手がルッツを単独のままにしていれば、基礎点は5.28点でした。これをコンビネーションにしたために、8.25点の基礎点を得られ、基礎点を3点近くリカバーできたのです。急なことだったためか着氷が乱れてしまいましたが、GOEで取り返そうとするよりは効果的なリカバーだったはずです。
実際、こういったリカバーはコンビネーションの大技を持っている選手はよく練習してあって、しかも極力シンプルなリカバリーで済むように構成してあるものです。それにしても安藤選手は見事でした。

しかし、高橋選手の構成は、リカバーのしようがない構成でした。2回跳ぶ4回転とトリプルアクセル、どちらも2回目のジャンプの方がコンビネーションになっているからです。ファーストジャンプで転べば必ずセカンド不明のシークエンスになって終わりです。後半にトリプルアクセルのコンビネーションをもってくる意図は理解できるのですが、4回転のコンビネーションを2回目にしていたのは戦略的にはリスキーなものだったといえます。多分、心理的に跳びやすい順に並べていたのでしょうが…。

まずこのエントリーではこれまで。
昨日の男子フリーで3人も失敗したコンビネーション回数制限違反については、後半エントリーに詳しく解説していきたいと思います。

2008年1月25日 (金)

スピンのチェンジエッジ

左足、反時計回転のスピンを上から見た図です。

バックはつま先で小さく回ります。この図はわかりやすいように円を大きめにしてます。

Spinb_4

赤いところが氷に接しています。
つまりエッジはインサイドです。

フォアは踵というか、ブレードの腹のあたりでやや大きめに回ります。

Spinf_4

エッジはアウトサイドになります。

上のまわり方から下のまわり方に、下のまわり方から上のまわり方に切り替えるのがスピンのチェンジエッジです。
右足だと、足の形が左右ひっくりかえった感じになりますから、インとアウトが反対になります。

実際にエッジを変えているアニメは、めんどくさくて作れません。ごめんなさい。
ていうかアニメ自体下手くそで見づらいと思いますが、ちょっとでも参考になれば幸いです。